表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
偽りの得失と喰らう銃弾  作者: 勧められた男
一章 終わる偽りの日
10/96

十呪 人間関係と情報

 時刻は、少し進んで授業中の時間。先程、転校生を目当てに教室に残っていた奴らも闘戯場に行ったので教室内には俺と形宮の二人だけになった。(形宮が授業に出ないのは、今に始まった事ではない)


「はぁ……」


「夜眞棊よ、そんなに見たかったのか?」


「まーな、見れるのなら見たいだろ」


 俺は形宮に率直に答えた。

 形宮が言うには、転校生は一つ上の学年――二年生で、かなりの美少女らしい。

 普通なら学年が違うだけで見る可能性も低いだろう。しかし、その美少女転校生のクラスが移動教室の授業だったらしく、もしかしたら、この一年の階――四階を通るかもしれないため、大半のクラスメイトが美少女転校生を見たいが為に残っていたらしい。


 結局、その美少女転校生はこの階を通らなかった為、見る事は出来なかった。

 俺も興味が無かったと言えば嘘になる。そういう転校生や美少女等、と言われれば反応してしまう。

 しかし、反応するだけでその先は関わりを持つ事も無いだろう、と一人で決め付けるのだが。


「お前は、転校生に興味無いのかよ?」


 こんな事は大抵の男子が、興味を持つと思う。なので、目の前にいるコイツでも興味ぐらいは持つだろうと思い、聞いてみた。


「それは、あるに決まってるだろ? 夜眞棊よ」


「だよな。如何にお前でも……」


「俺の新たな人脈の構築と客にするためにな!」


「……」


 やはり、聞いたのは間違いであった。


 「間違いでは無いぞ?」


 また人の心を読みやがった!?


「数多くの人との関係や多種多様の情報は立派な武器だ。むしろ、能力より俺は恐ろしいと思うがな」


 形宮は軽い感じで言うが実際言ってる事は結構大切だと思う。

 能力至上主義なんて、呼ばれている世の中でも、やはり人間関係や情報は重宝するだろう。

 現に、昨日の歴史の授業の時も俺は他の奴と話さなかったし、先程まで俺は転校生の事など全く持って知らなかった。

 情報の事ならともかく、正直、俺が人間関係の事など話す価値は無いだろう。 


「はぁ……」


「まあ、そう悲観するな。夜眞棊よ」


「そう言われてもな……」


「別に人間関係が多い方がいいとか、大量の情報を持ってればいい、というものでもない。一人でもいい、一つだけでもいい。逆に言えばそれだけで、十分だ」


「……」


「と、済まない。しんみりとさせてしまったな」


「いや、別に良いって」


「そうか」


 何やら少し、ぎこちない空気になってしまった。

 

「そういえば、今日は部活は無いのか?」


 ぎこちない空気を打破すべく、俺は部活の話をした。

 俺が在籍している部活は『情報部』という部活だ。活動内容は名前の通りかどうかは分からないが、教えて欲しい情報があったら教えるという部活だ。近頃は活動内容が増え、依頼があればそれを解決する活動もあるが、大抵、前者は形宮、後者は俺という風に分担している。分担してると言っても顧問はいないし部員は俺と形宮しかいないのだが。

 というかよく創部出来たなと、今でも思う。これもそれも、形宮が俺を誘って勝手に創った部活であり、それぞれが思う事はあると思うが、(実際かなり問題があった)それを形宮は交渉してこの『情報部』を創った。(交渉ではなく脅迫だと思う)


 部活の事はおいおい語るとして取り敢えず、創部した本人であり、部長の形宮に聞いた。


「あるぞ」


 と、形宮は言い、制服の内側から一枚の封筒を出して俺の机に置いた。

 それを俺は左手で取った。

 

「てか、普通に言えば良くないか?」


 毎回そうなのだが、何故か何時も依頼内容が封筒に入っているのだ。普通に口で言えば良いものだと俺は思う。


「夜眞棊よ」


「何だ?」


「情報というのは、おいそれと口に出していいものでは無い」


「そういうもんなのかね?」


 と、言いながら封筒を見た。

 そして、簡単――というか普通の依頼であることを願うばかりである。依頼――悩みを解決するのは別に良いのだが、玉に本当に酷い依頼まであるのだ。隣り町まで行ってG退治や二十四時間警護など、他にもあるが全部挙げると三十は下らないんじゃなかろうか。

 学生がやるような事でも無いのを平気でやらせるので正直怖い。

 だが、考えても仕方ないので俺は封筒を開けようとした。


「形宮君、何やってるんですか?」


 声がしたのでそちらに向くと、教室の前の入り口の所に委員長が立っていた。


 「これはこれは、いいーんちょう」


「……変に伸ばさないで下さい」


 委員長が形宮の発言に呆れながら言う。


「委員長、如何したの?」


 俺は委員長に声を掛けた。

 今は絶賛授業中でしかも能力の授業である為、闘戯場に居るべきはずなのだが何故、委員長はこんな所にいるのだろうか?

 

「形宮君を呼びに来たんですよ」


 委員長はそう答えた。

 当の、呼びに来られた本人は、


「ほう。何だ、委員長?」


 絶対、委員長が呼びに来た理由を分かっているがあえて分からない振りをしていた。


「何だ、じゃありません!」


 委員長は入り口の方から俺達の方に近づいて来た。


「授業に出てください」


 と、言ってきた。


「断る」


 しかし、形宮は二文字で綺麗サッパリ断った。


「何でですか?」


 面倒臭いだけだと思うが、委員長はそんな事は思わないらしい。


「委員長よ」」


 形宮が委員長に向かって言う。


「世界を救う事と授業に出ること、どちらが大切だと思っている!」


「そんな訳分からない事を言う人を授業に参加させることです!!」


 ご尤もです。

 というか、もしこの二択が本当だったら本気で授業を選びそうだな、委員長。


「まあ、正解だな」


 いや、否定しないのかよ!?


「委員長の言ってることは正しいに決まってるだろ、夜眞棊よ」


「この野郎……」


「どうして、授業に出てくれないんですか?」


 委員長が形宮に向かって必死に言う。


「委員長よ」


 形宮が真剣な声で言う。


「実は、少し悩みがあってな……」


「悩みですか?」


 形宮の突然の告白により、委員長の表情が真剣になる。

 

「形宮君……私で良ければ相談に乗りますよ」


 と、『委員長相談室』が始まった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ