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休息

 ナースの女性の姿はとても輝かしい、しかし、ベッドに座っている男の顔はすこぶる優れなかった。

それもそのはず。

その男は耳元でさっきから小言を言われ続けているからだ。

「お兄ちゃん、聞いてるの?」

さっきから小言を言っているのは、イグナの妹、サラだ。

サラは、金髪をツインテールに結んだ美少女で、軍服を着用している。

「ああ、分かったよサラ。」

「分かってない!まったく、アーマーも着用しないで戦うからこんなことになるんだよ?」

イグナの言葉は火に油だった。

小言はさらにエスカレートしていった。

「ねえ、士郎さんも何か言ってあげてよ。」

同じ病室にいた士郎にサラから声をかけられた。

もちろん、士郎も怪我人としてこの病室に運ばれている。

「いや、そんな、イグナさんに文句なんて。」

「お兄ちゃんが油断するから士郎さんだってそんな怪我したのよ?なにかいってやんないと、お兄ちゃんのためにならないよ。」

サラは、そこでため息をつくと言った。

「まあ、二人とも生きてて良かったよね?士郎さん大活躍だったって話しだし。」

「いや、そんな、偶然だよ、不意打ちみたいなもんだし。」

ここで日本人の謙遜の精神が出る。

「ああ、これがケンソンってやつね、日本人特有の。」

サラは何故か眼を輝かせて言った。彼女は日本文化に過剰なあこがれがあるのだった。

「ねっ、ねっ、合ってるよね?士郎さん?」

「う、うん。」

妙にハイテンションになったサラに気圧されながらも士郎はしどろもどろに答えた。

「そう、ケンソン、ジャパニーズ侍が相手を引き立たせるために使ったって言う奥義、私たち日本通の間では有名だわ。相手を引き立たせるために、自分を低く見せるなんて、侍は凄くクールな考え方をもった戦士だったのね。」

ウンウン、と一人で納得しているサラ、何かちょっと間違っているような気がしないでもなかったが士郎はつっこもうとはしなかった。しばらく、サラの間違った日本談義が続いていたが、不意にコンコン、と病室のドアが叩かれた。

「士郎、いる?」

「あ、はーい。」

士郎は答えた。

すると中に長い黒髪の日本人的な容貌の美少女が入ってきた。

彼女は、明治の女学生のような格好の和服を着ていた。

少女は気遣わしげな表情で、言った。

「士郎、大丈夫?」

「うん、ちょっと痛むけどね。」

「そちらの方は?」

「ああ、あれがイグナさんだよ、いつも話してたでしょ、ユリア。」

「ああ、あなたがイグナさん?士郎がいつもお世話になってます。

「よろしく、そっか、あんたが士郎の彼女かあ。」

「いや、だから違うって言ってるじゃないですか。」

士郎は真っ赤になって否定し、ユリアもまた少し頬を赤らめていた。

「わああ、和服だ、和服!」

そんな中、サラがそんな空気をぶち破るようにサラがはしゃいだ。

と、ここでサラは少し場のテンションが自分に付いてこれていないのに気付きコホンッと咳払いをして。

「わ~、凄い、和服だ和服、私も一度着てみたい。」

「あら、あなたは?」

「これは失礼、私、イグナの妹のサラです。」

「そうなの、確かにとてもよく似てるわね。」

すると、サラは少し照れくさそうに手を後ろに組んでエヘヘヘッと笑って。

「ね、ね、そんなことより和服を着せてくれない?一回でいいから。」

「うん、じゃあこんどお家においで、その時、サラちゃんにあう和服を着せてあげるから。」

「ホントに?ありがとう、ユリア。」

二人はすっかり意気投合したようだった。

イグナと士郎はこの光景を満足げに見つめていた。















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