決着
士郎は朦朧とした意識の中、胸元の十字架を無意識に握り締めていた。
そして、ある約束を思いだしていた。
一日前のこと、士郎は少女にこの十字架を渡された。
そして少女は言った。絶対に帰ってきて、と。
フェンリルはこのあと一人残らず士郎たちを殺すだろう。
そうなったら約束は守れない、それだけは困る、絶対にだ。
士郎は立ち上がった。そして、フェンリルと対峙する。
向こうはまだこちらに気付いていない。
士郎は殺気のこもった眼でフェンリルを睨み付ける。
武器は心もとない銃剣一つ、だが武器が何だろうとやることは変らない。
目の前の敵を殺して、無事に生還することだ。
立ち上がった瞬間、傷口が開くのを感じたが、アドレナリンが痛みを緩和させているようで、士郎はほぼ痛みを感じなかった。
士郎は出来る限り音を立てないように銃剣を槍のように構えながらフェンリルに突進した。
一瞬、一瞬だが、フェンリルは死角からの攻撃に反応が遅れた。
そして、その一瞬が命取りになった。
フェンリルが体をよじった時には銃剣がフェンリルの横っ腹に突き刺さっていた。
だが、そこで士郎は容赦せず銃剣の引き金を弾がなくなるまで引き続けた.
隻眼のフェンリルは倒れた。そして、士郎も。