戦場へ
ここ数日、世界ではおかしな事件が多発していた。
ある農家の家畜が突然、骨をのこして、全て消えたり。
突然の電波障害や電子機器の故障。
航空機が何台も落ちたり。行方不明者が続出していることなどだ。
テレビのニュースキャスターがこの異変を報道し、専門家が的外れな議論を交わしている。
ネット上ではまことしやかに世界の終わりが囁かれていたり。
みんな無責任だ。
「はあ。」
少年はため息をついた。
これがホムンクルスによって作り出された生物の仕業だとは誰も思うまい。
ましてや、今からその生物と戦わなければならない人間がいることも。
少年はつけていたヘルメットを外して周りを見た。
周囲の人々も彼と同じ格好だった。
特注のヘルメット、所々に付けられたアーマー、そして、切っ先に剣が付けられた銃を身に着けている。
この物々しい格好で、今から敵を討伐しに行くのだ秘密裏にだ。
「おい、何やってんだよ士郎。」
辺りを見渡していた士郎に声がかけられた。
「あ、イグナさん。」
振り返ると、そこには金髪の青年が立っていた。
ヘルメットを被っていない、アーマーもしていない。
「・・・本当にそのままで行くんですか?」
「ああ、駄目?」
「いや、あなたの実力は知っていますし別段心配はしてないんですけど、ただ。」
「ただ?」
「かなり目立ちます。」
そうかなー、とイグナは辺りを見渡して言った。
フッと士郎は笑ってしまった。
「あ、今笑っただろう?」
「・・・、笑ってないですよ。」
「イーヤ笑ったね、この野郎。」
そう言って、士郎はイグナにヘッドロックをくらい髪をクシャクシャにされた。
「うわあ、やめてくださいよ、ギブギブ。」
すると、イグナは手を離して言った。
「まあ、お互い死なないように気を引き締めて行こうぜ。」
「はいっ。」
実はイグナは上官だったりするのだが。
イグナの命令、「上下関係?そんなん無し無し。」によって堅苦しい礼儀などは一切禁止されている。
ここまで言えばお分かりと思うが、彼らはある軍隊のメンバーである。
そんな彼らは、今、戦地へ向かう。