TOFUKING!
見ればわかりますが3話です
人物表
主人公
甘いものは苦手です 容姿は想像にお任せ
自称未来が読み子さん
甘い物好きー 灰色ロング
コウノトリ君1号
嫌いなものほぼ無し 藍色ショート
彼女
甘い物好き猫舌 銀髪ロング
悪友
何でも好き 茶髪 名前を考えていたはずなのに忘れたという
ハル
甘いものは嫌い
「しょーねんー、まだかー?」
「はいはい、少し待っててくださいね」
『ふゆのよていひょう』と書かれた手帳を、僕の後頭部めがけてぺちぺちと叩いてくる読み子さんへと適当に返事をしながらコウの髪を梳く。ちなみにこの手帳、先のことが全て埋まっているというよくわからない手帳であり、予定表なのか計画帳なのかまるでわからない。そろそろ冬も終わるけど、四季で変えるんだろうか?
「しょーねんー、待ったぞー?」
「はいはい、良い子ですからもう少し待ってくださいね」
数分ごとに繰り返される読み子さん。
よく遠足の前日にワクワクしてて寝られず次の日寝坊するという人はいるが、読み子さんは全く逆で今日のために朝一番に目覚めた。おかげで身だしなみは全く終わらず、ぺちぺちは続く。
今日は休日ということで、何時だか約束した水着を買いに行く日。というか春季休みという褒美を貰った以上は毎日が休日なのだけど。
その後、身だしなみも終わり、ぺちぺちも終わったので皆で外へと出れば、朝のさわやかな空気と一緒に、死ぬんじゃないかと思うほどの寒気が迫ってくる。
「道はどうします?」
「んー…そうだな」
下宿から街へと続く道は3つあって、一つは迷うと変な廃屋に出ると言われるなだらかだけれど時間の掛かる道、もう一つは遅刻常連者にはおなじみとなっている急だけれど早い道、そして最後はモノレールに乗ること。
私的にはモノレールが一番楽なのだけれど、読み子さんもコウもモノレールは嫌いだから乗らないだろう。ちなみに水着サークルの連中はそれぞれを心臓破りの坂、精神崩しの坂、という名で呼んで日々トレーニングに活用しているらしい。他の乗客のことを考えてモノレールに乗らない彼らはとても紳士。
「コウは急なのがいいー!」
軽い耳鳴りに耳を傾けること数秒、こんなに寒くても元気いっぱいなコウがくるくると回りながら言った。春夏秋冬、いつも元気で羨ましい。
「よし、なだらかな方にしよう」
「むー!じゃあおにーさんおんぶ!」
心臓破りの坂を見ていた読み子さんが告げれば、不満そうにコウが唸り、そしてなぜか僕の背中に乗る。
「こ、コウノトリ君!自分で歩け!」
「やー!」
「…少年?」
読み子さんの冷ややかな視線を受け流そうと心臓破りの坂を見れば、なるほどそこには朝にも関わらず数人の勇者たちがえっほえっほと汗を飛び散らせていた。当然の如く服装は水着一枚。…凍死しないか心配になる。
「ところで読み子さん、水着サークルは嫌い?」
背中ですやすやと寝息を立てているコウを背負いなおすと、私機嫌が悪いんですオーラを全身で出している読み子さんへと聞く。
「嫌いなわけじゃないが…外でもあの格好なのだろう?」
読み子さんはそう言って後ろの下宿の方を振り返る。
「は、恥ずかしいではないか…」
「なるほど…つまり読み子さんはああいうのが好きだと?」
「少年!?」
その後、赤い顔で必死に言い訳する読み子の相手をしながらのんびりと坂を下る。
読み子さんは基本的に初心であり、思ったことを素直に言えないのである。その結果として生じる言葉責め。勇者たちに何か言葉に出来ないような感覚が芽生えてきていることを、彼女はまだ知らない。できれば一生知らないあなたで居てください。
□ □ □ □
街に着き、僕の背中から降ろされたコウとなぜか僕の背中へと乗ろうとする読み子さんを宥めたりしながら、人影のまばらな街をだらだらと歩いたり立ち止まったりすること数時間。
今の時期は当然冬の終わりの方であり、長くもだるい山道を終わった我々を迎えるのは遮るものの少ない寒風。つまり普通に寒い。冬将軍は無理せず、さっさと引退してほしいものだ。
そんなに寒いならさっさと目的地へと行けばいいのだが、ところが問題はそう簡単には解決しない。
僕らの住んでいる街には山と川と湖はあるが海は無い。そして川と湖は森の中であり、つまりそこで泳ぐということは、魔物が闊歩する中、肌着一枚を頼りにきゃっきゃうふふと遊ぶことになる。そんなことをするのは『武器?防具?そんなもの己の肉体があれば何も要らないさ!』というたくましい人か、もしくは頭をやられた馬鹿くらいだろう。ちなみにプール場は無いので、遠出する必要がある。
そんな街に水着屋が流行るわけも無く、つまり誰一人として水着屋がある場所を知らないのだ。
結果、僕らは誰が望んだわけも無くびゅーびゃーと吹く寒さの中、昼食を終えた今もウィンドウショッピングなるものをし続けている。
ちなみに、でーとなのだからそう簡単に目的地に言ってはいけないのだ!というのが読み子さんの建前である。
「読み子さん…そろそろどこかで休みませんか?」
「少年!この程度の寒さでへこたれるのは精神が…精神が…」
何か言っている最中に壊れた機械の如く止まる読み子さん。視線の先にあるのは、一台の車。看板の様なところにはカラフルな字でアイス屋、と書かれている。どうやら冬の寒さにも負けずに元気に営業している様子。・・・冗談だろ。
「…食べたいんですか?」
「いいいや!そんなことはないぞ?」
「そうですか」
「いやしかしだな、少年…」
聞いてみると、赤い顔で否定するも何か言おうとがんばる読み子さん。人はああも手と足が同時に動くものなのか…。というよりよく転ばないな。
「コウは食べたいー!」
「んー、そっかー」
何やら言ってくる読み子さんをスルーしながら、コウと目線を合わせる。正直者が得をするとも言う。当然、僕は食べたくない。
「何味がいい?」
「まっちゃー!」
「あれ?少年?聞いているのか?少年ー!?」
「抹茶かー」
「少年…?その…私もだな…」
意外と渋いな…。
「それじゃ読み子さん、アイス買って来るんでその辺のベンチに居て貰えますか?」
「少年…」
そう告げると、まるで捨てられそうな子猫の様な顔をする読み子さん。そこまで食べたいのか。寒空の下で食べるアイスに何の未練があるのやら、まるで判らない。
「…わかりました、それで何味がいいんです?」
「う、うむ…」
ため息を付いて先を促せば、どうも考えてなかったらしくあー、とかうー、とか唸リ始めた。
そして暇になったのか僕の足元にぺたーと抱きつくコウ。ぬくぬくで動きたくなくなる僕。
めっさ寒いというのにどうしてこうも元気なのか、この人たちは。
そして読み子さんは結論が出たらしく、満点の笑顔でチョコ!といった。
「あ、旦那様、私も欲しいです」
「…」
アイス屋へ向かう僕の足が心なし重くなった気がする。
「メリー様ー!」
アスファルトを、メイド服の少女と銀髪に割烹着というすごい目立つ格好の女性が何時所に歩いている。
まぁ…目立ちさ加減ではアイスを食べるであろう僕らも大差しないと思うけれど。
「んー?何ですかー?」
「ユメは大きくなったらメリー様のお嫁さんになるのです!」
「おおー、それは楽しみですねー。それではお姫様、晩御飯は何がいいですか?」
「お肉!」
「魚肉ですね!」
「…おに「魚肉ですね?」」
「…うん」
何だろう…今微笑ましいものと後にとてつもなく悲しい物が見えたような…。それにしてもあの女性、彼女に似てる気がする。
そんな光景も眺めながらのろのろとアイス屋へと近づけば、目に写ったのはうろうろと落ち着き無くうろついている、悪友でもある茶髪の野郎であった。
寒空の下、どうしてこいつがここに?という疑問が湧く余地も無く、そいつは僕を素早く見つけて満点の笑顔で近づいてくるではないか。同じ笑顔でも読み子さんやコウとは月とすっぽんほどの差があるのは言うまでも無い。
急遽回れ右をしようとする僕の足。
だがしかし、そのたくらみはワクワクして待っているだろう読み子さんが見えて砕かれた。
「こんな寒い日にこんなとこで会うとは!さてはお前も馬鹿だな!そんなお前には俺にアイスを奢る権利をやろう!」
「…」
そうこうしている間に奴は僕の元へと近づき、アイス屋へと導こうとする。
悲しいことに手を振り払いながらもアイス屋へと向かわざるをえない僕。
車内も寒いのか、それとも暖房を入れると色々拙いのか、アイス屋さんの店員がいらっしゃいませー…と死にそうな声で迎えてくれた。何故この季節に売ろうと思った。
「チョコと抹茶と…」
「追加でバニラ1つ」
「…何でお前に奢らないといけないんだ?」
「ここであったのも何かの縁、奢っておいたほうが後々楽になるぞ?」
こいつ・・・頭打ったのか?
「楽になるとは思えないんだが…」
「まぁ聞け、お前ら水着買いに来たのに店が見つからなかったんだろ?今なら俺がアイス1つでで案内役を引き受けてやろう」
こいつにアイスを奢るべきか、それとも寒空の中歩き続けるか…。
「それに早くしないと店員が死ぬぞ?」
見れば店員さんは、客が居る前で下手なことは見せられん!というプロ根性を感じさせる笑顔で立ち続けていた。
その笑顔に負けたわけではないが、ここは店員さんのためにも、そして僕の健康のためにもこいつに奢るのもやむなしと判断した。
その後、ベンチで待っている読み子さんたちにアイスを渡しながら、こいつが合流する旨を伝えた。
読み子さんは最初しぶしぶといった感じで聞いていたが、アイスを舐め始めるとそんなことはどうでもよくなったのか、機嫌が良くなった。飴玉一つで誘拐されそうな性格である。
それにしてもこのアイス、激しく微妙だ。しかも冷たさで舌が麻痺してきた。
「コレは…微妙ですね」
彼女も同意の様で僕の持っているTOFUKINGという、不思議なアイスを見つめる。
何が微妙ってキングの名にふさわしいその圧倒的な豆腐感。まるで冷たい豆腐を舐めているかの様な気分にさせられるその味と触感は何ともいえないハーモニーを築き上げている。考えた奴はよっぽど豆腐が好きだったんだろう。
「おにーさんのソレどういう味がするのー?」
当然一気に食べるわけでもなく、ちびちびと食べる僕に興味津々な様子で聞いてくる小さき人。
「んー・・・豆腐味」
「うー?」
どうも通じなかった様子で、コウはパタパタと僕の周りを動き始める。
やがて何か思いついたのか、その手に持っているアイスを僕のほうへと差し出してきた。
「こーかん!」
「ん?いいよ?」
「ダメだ!」
当然、断る理由があるわけも無くトレードは無事成功するかと思われたが、なぜか怒った感じの読み子さんの一言で中止となった。
「何でー!」
「とにかくダメだ!」
「むー!」
それに伴いコウはぷんぷんと怒り始め、読み子さんと睨みあい始めた。
茶髪の野郎はというと、その様子を面白そうに眺めている。火に油を注がないか非常に心配である。
それにしても読み子さん、そんなに豆腐味食べたかったのかな?
「まぁまぁ」
とはいえこのまま睨みあいが続くと拙いことになる。主にアイス的な意味で。見れば読み子さんのもコウのも、気温が低いとはいえ、太陽光線によってその短い生涯を閉じようとしている。
「あっ…」
ということで素早く読み子さんのアイスを取ると、僕のTOFUKINGを渡し、彼らの犠牲が地へと落ちないように食べ始める。
食べた拍子に読み子さんが何とも言えない顔をしていたが、何だったのだろう。
「うー!じゃあおにーさんソレと交換!」
「はいはい」
ぷんぷんと怒っている小さき人ともトレードを成立させると、どうも機嫌が直ったのかチョコのアイスを舐め始めた。
その結果として、僕のアイスは抹茶という渋いものになってしまった。甘いものが苦手だからいいけどさ。
一方、読み子さんは僕のTOFUKINGを真っ赤な顔で見つめている。
別に毒何て入ってないぞ、むしろ豆腐しか感じない。
「…お前って、そういうの気にしないんだな」
抹茶の冷たさと渋さを苦々しく味わっていると、飽きれた様な顔をして野郎が話しかけてきた。
「どういうこと?」
よく意味がわからないので聞き返してみると、奴は哀れみの視線を向けてきやがった。
「いや、わからないならそれで良い」
□ □ □ □
女性というものは、水着1枚決めるのにどうしてああも時間が掛かるのだろうか?
それなりに広い店内で、ああでもないこうでもないときゃっきゃっと騒いでいる読み子さんやコウを見ているとその疑問は費えることが無い。
「なぁ、なんであんなに時間掛かるんだ?」
「…僕も気になる」
隣では疲れた様子の茶髪の野郎がベンチにもたれ掛かっている。
女性用水着コーナーで男が二人放置される、この精神的疲労を誰かわかってくれ。
大体水着なんて下着と何が違うのだ。つまり今この状況、女性用水着コーナーで放置されているということは、下着コーナーで放置されているのと同じようなものなのではないのか!?
僕らはマネキンが水着や下着を着けている光景には何も感じないのに、世間からはまるで変態を見るかのごとく僕らに冷たく突き刺さるだろう。
コレでは疲れても仕方ないことだと思う。
なら何故他の場所に待たないのか?という疑問の理由は2つある。
1つ目はここは女性水着専門店だということ。それに伴いこいつが何故ここの場所を知っていたのか?という疑問が出たが、黙秘権とそれどころじゃない疲れによって言及は終了した。
そしてもう一つの理由が…
「少年少年!コレはどうだ?」
「…ええ、似合ってると思いますよ」
「そうか!」
「おにーさんおにーさん!コウはー?」
「うん、可愛い可愛い…」
「えへへー」
さっきから読み子さんとコウが何故か試着しては僕のところまで意見を求めに来て、そしてまた戻っていくというループが起きているからだ。
このやり取り、もう何度目になるかわからない。
「…お前も大変だな」
最初の方こそ面白そうにからかっていたコイツも、回数が10を越えた辺りから哀れみと労いの視線を送るようになってきた。
水着店に入ってからおよそ2時間ほど、辺りは赤く染まり始めているが、水着は未だに決まらない。
「…!」
「どうした?」
ふと、疲れた様子でうな垂れていた悪友がすごい勢いで立ち上がった。
「すまない、緊急の用事が出来たのでここは去らせて貰おう」
「ここに一人置いてくのかよ!」
「それどころじゃねぇんだよ!」
奴も必死なら僕も必死だ。
まだ二人だったから良かったものの、ここで生贄…もとい戦友が失われては、僕へのダメージがすさまじいことになる。
そうこうしている間に、騒いでいる野郎2人の元に三つ編みの女性が近づいてきた。
「ひ…」
その女性を見た瞬間、顔が引き攣る僕と悪友。
「こ、こういうことなんで悪いな!」
その一瞬の隙を突いて僕の拘束から逃げ出すと、悪友はすごい勢いで走り去っていった。
「あ、逃げるな!ユウー!」
そして悪友に負けず劣らずの速度で奴を追っていく三つ編みの女性。
彼女こそ茶髪野郎の幼馴染で、奴に心底ほれている女性。名前はハルという。
ハルさんは黒く長い髪を三つ編みにしており、黙っていれば才色兼備の読み子さんと同様、彼女も黙ってじっとしていれば文学少女に見える。
しかし彼女の本質はそんなところではなく、簡単に言うととんでもない薬マニアなのである。健康マニアではない、薬マニアだ。
薬学科へと入学したその趣味は留まることを知らず、身近なものでは風邪薬から胃薬、縁の無いものでは媚薬から毒薬まで幅広く作るが…ここまでならただの薬好きの少女で終わっただろう。
問題はその薬たちを己の手段として活用することである。
酷いときには食事に毒を仕込まれ、寝ているときに注射されかけ、何らかの薬と偽って効果のわからない薬を送りつける。最近はソレも穏やかになったほうではあるが、未だ僕らの中では彼女は恐怖の象徴であり、警戒せざるを得ない女性の一人である。
逃げていった彼に幸あれ。
とはいえ、逃げた彼のことばかり気にしていてはしょうがない。
「少年少年!こっちのはどうかな?」
「…そうですね」
なぜなら僕は逃げられないのだから。
□ □ □ □
家についても、買った水着を披露したりしてご機嫌な読み子さんからも解放されると、お風呂場で一息入れる。
それにしても疲れた…。
「お疲れ様です、旦那様」
「…」
ふー、と息を吐いていると、突如目の前に現れる肌色の何か。その何かはスタイルがいい、とは言えないが胸の辺りにある2つの膨らみが女性であるということを確実に示していた。
そして混乱からか、僕の視線はその何かに釘付けとなっており、お風呂の蓋越しとは言え少し視線をずらせば見えてはいけないところも見えてしまいそうだ。
しかし誰が望んだわけも無いのに、混乱はそれだけでは収まらない。
「しょ、少年!よ、良ければせせせ背中をだな!?」
突如お風呂場へと突入してくる読み子さん。こちらは一糸纏わぬ姿の彼女とは違い、きちんと今日買った水着を着ている。
「…」
「…」
「…」
三人、無言で見詰め合う中、僕の脳内ではエマージェンシーコールが鳴り響く。
能面の様な顔のまま、無言でお風呂場のドアを閉める読み子さん。
「見られてしまいましたね」
読み子さんが去り、嵐の前の静けさが支配する中、まるで悪戯が見つかった子供の様な顔で彼女が言った。
嵐の前の静けさも、過ぎ去ればあるのは嵐のみである。
突如開け放たれるドア。
その先には般若の面を被った、水着姿の女性。すらりとした、モデルのような体系の先には1本の包丁が握られており、静かに獲物を探している。
だがしかし、目的の獲物が見つからなかったのか、般若の面は二度三度とお風呂場を見渡した後、静かに去っていった。
「危ないところでしたね?」
再び現れた彼女が言った。
お願いだから静かにしていてくれ…。
「少年!少年が良ければせせせせ背中を流してやややろう!」
般若が去ってから数分。どうやら全て無かったことにするらしく、水着姿の読み子さんが再度現れた。
「あー!コウもー!」
「…」
何故かコウも現れた。
「しょ、少年?力具合はどうだ?」
「うん…いいと思いますよ」
「そ、そうか」
背中ではおっかなびっくりの様子で、読み子さんがさわさわと背中をこすっている。正直に言うともう少し強くても良いのだが、そんなことを言っている余裕は無い。
「おにーさんまだー?」
「はいはい、もう少し待ってね…」
僕の目の前では髪を泡立てたコウが目をつぶっており、早く流してほしいのか何度も催促してくるので、しゃくしゃくと髪を洗ってやると、気持ちよさそうに声を漏らした。
そして浴槽には何故か!彼女が浸かっており、僕の精神を削ることに余韻が無い。
一応、読み子さんからはぎりぎり見えないところで、コウは目をつぶっているので見えないのだが、僕からは丸見えである。しかも時折色々なところが見えそうになるのだからたまらない。
もしも万が一その光景に反応してしまえば、その先には何が待っているのかわからない。よって僕は精神がガリガリと削られる生き地獄を味わうしかない。
しかも読み子さんやコウに見つかった場合は血を見る可能性すらある。生き地獄が地獄になるのはさすがに嫌だ。
ならば目線を外せばいい、というがそう簡単に外せたら苦労はしない。僕も男なのである。
もしも一つだけ願うことが許されるならば、一人平穏にお風呂に入りたい。
とはいえ、その肌色を見ていると少しだけ感謝したいとも思えてしまった。
アイスはクッキー&クリームが好きです
4話目は未定
というより、もう片方の連載状況次第
ではでは、少しでも楽しんでいただけたら幸いです




