第三話
フィリップ様とリディア様の結婚式まで2週間。
リディア様はリディア様で、こちらの国のしきたりや歴史などを学び、私は私で侍女のマナーや重役貴族の情報などを覚えなくてはいけなかった。
フランティアでは王族一人に1人か2人の侍女しかつかなかったのに、ビダンティウスでは通常5人ほどつくらしい。
そのうちの一人が私、もう一人がカナ。
あとは小柄な茶髪の双子、アリーとミリー。
最後は黒髪の妖艶な美女、サクラ。
私は4人の前で小さくお辞儀をした。
「こんにちは、フランティアからリディア様の侍女として付いてきました、ティカと申します。」
「こんにちは。私たちはみんな仲良く、がモットーですから、そんなに気張らないでね」
アリーがにこっと笑って手を差し出す。
小さくて細い手。
ぽっちゃり体型の私の手とはえらい違いだ。
私は一瞬躊躇して、アリーの手を握った。
「さて、今日は王宮の侍従者たちや地理を紹介しますわ。ついてきて下さい。」
黒髪をなびかせたサクラが侍従室を出る。
あわててついていくと、まず着いたのはいいにおいのする場所だった。
香ばしい肉の香り、コトコトと煮ているスープ、笑顔になるようなデザートの甘い匂い。
一瞬で料理棟と分かった。
「こっちの部屋は第一料理室。主に王族の料理を作っているの。あちらは第二料理室。私たち従者たちの料理を作っているわ。私たちは朝、昼、夕の3回、ここにきて、向こうの大食堂でご飯を食べるのよ。」
私はポケットからメモ帳を取り出すと、黒鉛で『南塔2F 料理室』と書く。
「どの料理もとってもおいしいけど、特に絶品なのはスープね!家で作ろうとしても絶対にできない味なのよ!スープやご飯はお代わり自由だから、食べられるだけ食べたほうがいいわ」
ミリーが大きな目をきらきらさせながらそう言うので、私はありがとうと言ってスープ、と書き足した。
次に着いたのはもわもわと熱気のこもるところ。
「ここは浴場よ。王族には一人一つの浴室があるけれど、私たちはここを使うの。で、隣は洗濯場。まぁ汚れた洗濯物は毎日部屋で回収されるし、洗濯済みのドレスなどは私室に届けられるからあまり私たちには関係ない場所だけどね。」
『南塔1F 浴場』と書く。
それにしても、王族が何人いらっしゃるか分からないけれど、一人一つってどれだけお金持ちなのよ・・・
お湯を沸かすのはとても大変だというのに。
「あとは・・・薬事棟ね。リディア様が急病のときなどはそこに行けば王宮医師が何人か待機しているはずよ。」
侍女3人が登場です。