第二十三話
「ただいま、メグ。」
「お姉ちゃん?!」
妹のマーガレットと会うのは2年ぶりだ。
そうでなくても、私は12歳から15歳まで4年間隣の国に学問留学していたので、ずいぶん久しぶりに感じる。
マーガレットは緑色の普段着のすそを翻しながら走ってきて、私に飛びついた。
「わっ」
「もう、帰ってくるならちゃんと言ってよ!何の準備もしていないのに!」
リディア様と同じ15歳だというのに、まだまだ幼いように思えるのは私が姉だからだろうか。
久しぶりに会う妹は私と同じくらいの身長で、軽く時の流れを感じる。
私は久しぶりに会う妹をゆるく抱きしめた。
「中に入ろう。お父さんもお母さんもいるよ。」
洗濯物の入っていた籠を持って、家の方に歩きだすマーガレットに急いでついていく。
家の前には番犬のコリーがつながれていて、私は座り込んで目線を合わせた。
「ただいま。」と言って撫でようとするが、どうにも他人という感じがするのか、少し嫌がられる始末。
ちょっと残念だ。私が拾って来た犬なのに。
マーガレットはドアを開けて、中に叫んだ。
「ただいま~!!お父さん、お母さん!おねえちゃんが帰ってきたよ!!」
「なんだって?!」
すぐにだだだだだ、と階段を駆け降りる音がして、お父さんがやってくる。
そのまま、「ティカ!!」と言って私を抱きしめた。
「お父さん、苦しいよ~」
一応フランティアで腕利きの商人であるはずの堅物といわれる私の父は、娘にとことん甘い。
ボーイフレンドという言葉を聞いたとたん怒り狂うのは分かり切っている。
そのせいでマーガレットは大変な思いをしていないだろうか。
私たちはとりあえずダイニングルームに移動した。
「ティカ、どうしたの。一体。まさか、王城を首になったの?」
お母さんがティーポットとカップを4つ運んでくる。
いい匂いだ。
ジンジャーの匂いがする。
「まさか。休暇をもらったの。」
「どれくらいこっちにいられるの?」
お母さんは慣れた手つきでカップを温めると、その上から紅茶を注ぎ、蜂蜜の瓶にスプーンを入れると、一つ目にはたっぷり、二つ目には少し、三つ目はいれず、四つ目は少しいれた。
そのまま一つ目のカップの中身を少し混ぜると、私に渡してくれた。
少し口に含んでほっとする。
ぴりりと辛い中に蜂蜜のとろけるような甘さが広がる。
お母さんの味だ・・・。
「ん~・・・休暇は2週間、なんだけど、」
「やったー!おねえちゃんとそんなに長くいられるのも久しぶりだね!」
休暇は2週間なんだけど、とりあえず1週間前にこっちを出ようと思っている、と言いかけた矢先、マーガレットがそんなことを言うので、本当のことを言い辛くなってしまった。
まぁ、いいか。
久しぶりなのだし、ちょうどいいかもしれない。
と、いうことで、私は実家に2週間丸々いることにしたのだった。