第二十一話
早朝7時にビダンティウスの王宮を出発してから、馬車に揺られること3時間。
何回か休憩をはさんだものの、来た時と同じようにいいペースで来ることができた。
船に揺られて4時間。
来た時は期待と不安でいっぱいだったリディア様も、今は安心して故郷に思いをよせているようである。
ぼーっという音とともに、船がフランティアについたことが分かった。
荷物を預けて船から港へ出る。
「うーん!懐かしいわ!まだこっちを出てからひと月ちょっとしかたっていないのにね。」
リディア様はにこっと笑ってそう言うと、緑の広がる丘を眺めた。
たくさんの果実のなる木が生えていて、見る限り畑しかない。
船を下りた瞬間から街、という印象のビダンティウスとは似ても似つかない。
「さ、行きましょう。」
私たちはフランティア国旗がかかれている馬車に乗った。
それから30分ほどすると、見慣れた景色が目に飛び込んできて私たちは馬車の中で目を合わせて笑った。
「リディア様のお帰りです!」
騒がしいな、と思い、馬車の外をちらっと見ると、たくさんの人。
まるで、フランティア国内のすべての人が集まったのではないか、というほどだ。
それほどまでリディア様は民に好かれていたのか、と考えると誇らしくもあり、嬉しくもあった。
リディア様はそのまま馬車を下りて、民衆の作った花道を歩いて王城に向かわれる。
私も急いで後を追った。
「おかえりなさーい!」
「リディア様~」
「お元気ですか~?」
リディア様は一つ一つの声に律儀に対応するので、なかなか進めない。
王城は見えているというのに、一体入れるのはいつになることやら。
民を思う気持ち、それがなによりのリディア様のすばらしいところだ。
こちらにいたころには、少しでも民のためにならないかと尽力していたのを思い出す。
だからこそ、あそこまで民に好かれているのね。
私はまっすぐ前を向いて、リディア様の姿を見ていた。