第十七話
馬車から下りてセシウス様にエスコートされて入ったレストランは、入った瞬間、瞬きを忘れてしまうくらい煌びやかだった。
赤いじゅうたんが敷き詰められ、丸いテーブルはすべて人で埋まっている。
高い天井にはいくつものシャンデリアがかけられ、静かにグランドピアノが演奏されていた。
ある若いウエイトレスが私たちに気づくと、頭を下げてから奥に引っ込む。
不思議に思っていると、すぐに一人の年配の人が先ほど引っ込んだところからやってきた。
なるほど、この人を呼びに行っていたのね。
「いらっしゃいませ、ホスフィニエ様。どうぞ、この奥のVIPルームへ。」
ホスフィニエ?セシウス様のことかしら。なんだか、ホスフィニエって聞いたことがあるような・・・
ちらっとセシウス様を見ると、彼は当然のように私を促す。
それにしても、さっきから腰に添えられている手が、気になる。
でも、こんなところではずさせるわけにはいかないし。
恥をかくし、かかせてしまうわ。
私はそんなことを考えながらレストランの中を歩いた。
「すごい・・・」
連れて行かれたVIPルームは、先ほどのところよりもさらに豪華なところだった。
机は一つ、椅子は2つしかないというのに少なくとも30畳ほどあり、シャンデリアが下がっている。
一体こんな無駄に豪華なところ、いつも誰が使っているのよ・・・。
ああ、セシウス様のような方か・・・。
中流家庭で育った私には縁のないところだ。
私は若干白けた気持ちでエスコートされたまま椅子に座った。
すぐに料理が運ばれてくる。
色とりどりの小さなもの。
オードブルのようだ。
それを慎重に切って口の中に入れる。
広がる濃厚な風味。
「おいしい・・・」
「それはよかった。ここの料理はどれも絶品ですから。」
セシウス様がにっこりほほ笑みながら、ナイフで切って口の中に入れた。
食べ方がとても優雅で、一目で上流階級だと分かる。
「ところで、ティカ殿の実家とはどのようなところですか?ご家族などは?」
「えっと、両親の他に妹が一人います。家は商家で・・・」
そのまま、私はおいしい料理を食べながらセシウス様の巧みな話術に引き込まれていった。