第十一話
リディア様の部屋がある中央塔の4階から、玄関のある1階にまで下りて行く途中、セシウス様に会った。
どうしていつも階段で会うのかしら。
セシウス様はリディア様に一礼をした後、お出かけですか、と尋ねた。
「そう、これからティカのドレスを買いに行くのよ。セシウス殿はどんなドレスが好み?」
彼は私の姿を上から下まで一瞥した後、にやりと笑って言う。
また悪寒がしたのはなぜだろう。
「そうですね、ティカ殿にはセクシーなドレスが似合うと思いますよ。レースの黒でリボンのついたような・・・」
リディア様は、にこりと笑うと私をちらりと見る。
「そうよね、ティカってば全然お化粧もしないし、いつだって侍女服なんだもの。そういうものを選んでくるわ!」
それじゃあね、と言って階段を下りていくリディア様に着いて行くと、彼とすれ違うとき、腕と腕が擦れた。
こんなに階段が広いのに。私がものすごくセシウス様のほうに近寄っていたわけじゃないのに。
私は下を向いて階段を駆け降りた。
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馬車に揺られること半刻。
私とリディア様と護衛の方たちは城下町に着いていた。
活気あふれる街並み。
優雅な雰囲気を醸し出すリディア様は自然と注目を浴びている。
が、本人はあまり気にしていないようだ。
「カナやミリーの話を聞いていたら、ここら辺にある仕立て屋が評判いいんですって!」
リディア様は元気にドレスのすそを翻しながら、その評判の仕立て屋、とやらを探し始めた。
が、すぐに見つかった。
とても分かりやすい所にあったのだ。
ショーウインドウには色とりどりのドレスが並び、とても高級そうだ。
「さ、入るわよ!」
リディア様は気後れすることなくそこに入って行った。
ガランガランとなるベルが鳴ると、中から恰幅が良いおばさまが出てきた。
「こんにちは、リディア様。私はティディ。マダムティディとよんでください。お話は聞いております。さぁ、どうぞこちらへ。」
マダム・ティディに着いていく。
所狭しと並べられた色とりどりのドレス。
私も一応女なので、つい目移りしてしまう。
いいなぁ、ピンクのふりふり。
リディア様によく似合うのだろうなぁ・・・