prologue
農業の栄える小さな国、フランティア。現王には4人のお子様がいらっしゃり、一番下の王女の侍女、それが私ティカである。
私が仕える王女の名前はリディア様とおっしゃり、とても活発だけど優しい方である。今年で15歳になり、大国ビダンティウスに嫁がれるにあたって、第一侍女の私も付いていくことになった。
フランティアの王城から馬車で30分、そこから船で4時間、そしてビダンティウスまで馬車で3時間。
リディア様も私もフランティアから出たことがないので、今初めて乗っている船の揺れがどうも変な感じだ。
「ねぇ、ティカ。ドレス、どっちがいいかしら??」
茶色の髪をふんわりと結い上げたリディア様は、ピンクのひらひらドレスとグリーンのマーメードラインのドレスを手にとって私に見せる。
ピンクのドレスはフェミニンな感じで、グリーンのドレスは大人っぽい。
「そうですね、リディア様にはこちらのオレンジのドレスのほうがお似合いですわ。」
私はクローゼットからもう一枚ドレスをとって王女に見せた。リボンのついたシンプルなドレス。
その瞬間、リディア様の顔にふわっと満面の笑みがこぼれる。
「そうね!それにするわ!フィリップ様、オレンジが好きっておっしゃっていたしね。」
フィリップ様はビダンティウスの第一王子。リディア様の婚約相手だ。
何度か舞踏会で遠くからお見かけしたが、見目麗しく優しそうな方である。
リディア様はオレンジのドレスを私から受け取ると、姿見のところで自分に合わせた。
「似合うかしら?私、子供っぽくないかしら?」
「ええ、とてもよくお似合いですわ。そうだ、リディア様、あと半刻ほどでビダンティウスにつきます。着付けを始めましょう。」
私はそう言って船内のドアが閉まっていることを確認し、王女の今着ているレモンイエローのドレスのチャックを下した。
真っ白なうなじ。きれいに引き締まった腰。小さなお尻。すらりとした脚。
どれも私にはないもので、とてもうらやましい。
はっ!私は何を考えているんだ・・・
私は首をふって雑念を追い払うと、先ほどのオレンジのドレスを下から引き上げ、背中の小さなリボンをひとつずつ結び、大きなリボンも丁寧に結んだ。着付け終了。
次に王女を化粧台の前に座らせると、髪をほどいてくしでとかす。さらさらになったところで編みこんでいき、ひとつにまとめる。そこにドレスと同じ色の小さな花をさす。よし、髪の毛終了。
最後に、茶色のアイシャドウを何種類か重ねた後、軽くアイラインを引き、ピンク色の頬紅を付けた後、ピンク色のリップを軽く乗せる。お化粧も終了。
リディア様は立ち上がると、姿見の前で一回転した。
「さすがね。ティカの腕は王宮一だものね。」
「ありがとうございます。」
私は侍女服のポケットから懐中時計を見て時間を確かめた。そろそろ到着か。
ビダンティウス、ここでの私の人生はどのようになるのかしら。
期待と不安を胸に、私は懐中時計を侍女服のポケットにしまった。
はじめまして。
よろしくお願いします!