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アーレンと仲間たちの旅 外伝①:始祖の鬼  作者: 凩冬馬


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第3話 参道整備の志願

白雲山の参道整備の話が島に広まると、島民たちはざわめいた。

山頂への道を切り開くことは、島民たちにとって長年の悲願であり、同時に危険を伴う大事業でもあったからだ。


「みさきちゃんが行くって、本当かい?」

「まだ若いのに……」

「いや、あの子の力があれば、きっと道は開ける」


そんな声があちこちで上がった。


藤兵衛の家では、みさきが静かに支度をしていた。


お浜が身を案じて用意してくれた、厚い布の頭巾、動きやすいように袖と裾を絞った羽織袴、手袋、大きな番傘。肌の露出をおさえて、太陽を避けるための工夫がいくつも施されている。


「みさき、本当に行くのか」


「はい。わたしの力が、島のお役に立つなら」


藤兵衛は胸が締めつけられる思いだった。


みさきはまだ十代半ば。

だが、その瞳には揺るぎない決意が宿っていた。


そのとき、戸口から声がした。


「藤兵衛殿、みさき殿をお迎えにあがり申した」


白峯家の嫡男、真之さねゆきである。


凛とした立ち姿、しかしどこか柔らかい眼差しを持つ青年だった。

実は、父に連れられて浜には何度も来ており、みさきはその姿を見かけたこともあった。

みさきは目が合うといつもやさしく笑いかけてくれる真之を何となく覚えていた。


「真之さま……でしたね、急にいかがされましたか?」


藤兵衛が頭を下げると、真之は軽く手を振った。


「そんなにかしこまらずともよい。今日は、ひとつ申し上げたいことがある」


藤兵衛とみさきが顔を上げると、真之はまっすぐにみさきを見つめた。


「参道整備の一行に、実は父の名代として拙者も同行いたす」


「え……?」


みさきは目を瞬いた。


真之は続ける。


「年端もいかぬ女子を、ひとり危険な目に合わせるわけにはいかぬ。あの山は険しい。落石も多い。みさき殿の護衛として、拙者が行くべきだと考えた」


「え、わたくしのような者のために……?」


「もちろんだ。みさき殿は島の宝。守るのは当然の務めでござる」


真之はそう言った。


藤兵衛は深くうなずいた。


「真之さま……どうか、娘を頼みます」


「任されよ!」


みさきには、真之の言葉が頼もしく思えた。


翌朝、参道整備の一行が白雲山の麓に集まった。


石工の親方・権左が大きな声で号令をかける。


「よし、全員そろったな! 石工六名、測量役の絵師殿、名代の真之さま、そして……浜のみさき!」


みさきは一歩前に出て、深く頭を下げた。


「どうぞ、よろしくお願いいたします」


石工たちは最初こそ緊張した面持ちだったが、みさきの礼儀正しさに表情を和らげた。


「いやぁ、噂の子か。思ったよりずっと小さいじゃねぇか」

「岩を動かすってのは本当なのかい?」

「無理はしないでくれよ、嬢ちゃん」

「危ないことは俺たちにまかしときな!」


みさきは小さく微笑んだ。


「はい。できることだけ、いたします」


そのとき、絵師の老人が近づいてきた。

細い体に大きな巻物を背負い、優しい目をした人物だった。


「わしは絵師の宗円そうえん。地図を描くのが役目じゃ。みさき殿、よろしくのう」


「宗円さま、こちらこそ……」


宗円はにこりと笑い、みさきと真之を交互に見た。


「若い男女がいると、すこしは旅も華やかになるもんじゃのう」


「そ、宗円殿……!」


真之がわずかに赤くなる。

みさきも思わず俯いた。


その様子を見て、石工たちはどっと笑った。


「おお、真之さまが照れておられる!」

「こりゃあ、道中が楽しみだな!」


真之は咳払いをして、きりりと表情を引き締めた。


「よし、出発する。皆、気を引き締めて参ろう!」


その声に、一行は「おう!」と答えた。


白雲山の参道整備という大きな使命。

一行の山頂に向けての旅が始まった

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