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Heart〜急に他人の心の声を聞けるようになった俺は、色々と企むことにした  作者: くろくまくん


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5/8

何もせんほうがええ

婆ちゃんの住む京都に着き、蕎麦をご馳走になる俺。


やっぱ天ざる蕎麦は美味い!


ようやく話を聞けると思ったら居眠りしている婆ちゃん。


いつになったらマトモに話が聞けるのやら…



◯登場人物


松岡まつおか 修二しゅうじ 23歳

IT企業勤務、システムエンジニア

人付き合いが苦手

急に他人の心の声を聞くことができるようになった。ボリューム調整可能


松岡まつおか 真司しんじ 20歳

シュウジの弟。既婚。子供がもう少しで生まれる


松岡まつおか 京子きょうこ 51歳

シュウジの母親


倉橋くらはし キヨ 82歳

シュウジの母方の祖母

 婆ちゃんは少し目を閉じて、顔をうつむけた。何か意味深だな…


「すぅ…」


 寝てるんかーい!!まぁ…腹がいっぱいになると眠くなるのな…子供かよ…。まぁとにかく。俺は婆ちゃんの肩をトントンと優しく叩いて起こした。


「ん…どうしたんや?」


 どうしたもこうしたもねぇよ。


「婆ちゃん、とりあえず家に行くか。家はここから近いの?」


「あぁ、まぁタクシーですぐやな。呼んでもらおか」


 マスターにタクシーを呼んでもらったらすぐに来た。婆ちゃんちはワンメーターどころか、30秒も乗ってなかったんじゃないのか、というくらいのところにあった。京都に来たのはいつだったか…学生の時の修学旅行で来た時は、なんかおもむきのあるような昔ながらの街並みというイメージだったが、このあたりはたまにぽつぽつと昔からの木造の家もあるが、新しく建て変わった家が半分以上な気がした。


 婆ちゃんちは、そのぽつぽつのひとつだった。


「まぁとりあえず入りや。ワシしかおらんから」


「うん、お邪魔しま〜す。意外と片付いてるんだな」


 1階の客間みたいなところに通された。8畳くらいの広さの和室で見るからに重そうなコタツと、座布団が敷かれていて、壁には山の風景みたいな水墨画の掛け軸がかけられていた。俺は座布団のひとつに座って荷物を横に置き、待った。


 会社に連絡するのは…数日後でいいか。


 婆ちゃんはすぐ現れた。まだ少し眠そうだった。


「あぁ、ひとつ言っとくけどな…そのちからの話は普通のやつの前ではせんほうがええ。どこで誰が聞いてるかわからんからな」


 え。割と婆ちゃんはしっかりした声で話した。さっきの蕎麦屋でとぼけていたのはワザとだったのか。


「婆ちゃんはやっぱ知ってるの、俺の言ってるこのこと。俺今までそういうことの前ぶれなんかも一切なくて。正直混乱してるんだ」


「まぁそうやろな。順番にゆっくり話そか。あ、シュウジが勘違いしとったらあかんから初めに言うけど、ワシはなんも不思議な力はないからな。あったのは従兄弟いとこやった。その人から聞いたり、又聞きのことやから全部が全部正しいかどうかはわからんからな」


 婆ちゃんの従兄弟…まぁこんなのがゴロゴロいたらびっくりするよな。というか、やったというのはもうその人は…。


「その力はな、随分と昔から受け継がれて来た力なんや。ただ、そんなにポコポコ受け継がれるわけやくて、1世代に1人という具合らしい。どういう仕組みかはわからんけどな」


 1世代に1人。どういうことだ。


「親子で親がそうなっても、子供がそうなるわけやないってことな。遺伝とはちゃうってことや。たぶんお前は知らんやろけど安倍晴明あべのせいめいとかもそれらしいで。あとはホンマにおるかわからんけど卑弥呼ひみことかももしかしたら、と言われているらしい」


 なんかスケールがデカくなってきたな。祈祷師きとうしやら陰陽師おんみょうじに転職か?


「んー、まぁなんとなく婆ちゃんの話はわかってきたんだけど…俺が急にそうなったのはどういうワケなのかな?」


「あぁ…たぶんやけどな。同じ世代で力を持ってたやつが死んだからちゃうかな。これも聞いた話やから確証はないけど、受け継がれる力は、そいつが死んだら、同じ世代の誰かに自動的に移るんや」


 なんだか話が穏やかじゃないな。俺と同じ世代のやつが死んだってことは…。というかこの力ってまぁまぁヤバいんじゃないのか。


「婆ちゃん、力が移るということはわかった。最近誰か俺の親戚が死んだ、ってこと?」


「んー、まぁ親戚っちゅうても、いつからかわからん始まりやから、結局同じ世代って言うても年齢はバラバラになるんやと思うで。あと、能力者というのはあまり近くに集まらんほうがええ」


 そういうことか。子供を成す年齢は人それぞれだから、その子孫になってくると、同世代であっても、何十歳と離れてる場合もあるもんな。


「近くに集まらないほうがいいというのは?」


「危ないからやな。その力はある程度の権力を持ってる人間やったらいいんやけど、そうでない普通の人間に発現した場合、利用されることがある」


 あ…俺は嫌な想像をしてしまった。軍事利用、人間兵器、人体実験…


「今まで…それで実際にそうなった。利用されたような人っているのかな?」


「そんなんは知らん。ただ、これはワシの勝手な想像やけども、良い考えを持ってる人間と、悪い考えを持ってる人間とでは、悪い考えの人間のほうが多いってことや。もちろん圧倒的な数ではないけどな。そのバランスで、世の中は成り立ってるんやと思うで」


 悪い考えの人間…婆ちゃんは年齢はそこそこいってるけども、話すことはとても的を射ていた。すごくしっかりしている。俺が日々考えていたようなことに、すっと婆ちゃんの言うことが入ってきた気がした。


「婆ちゃん。俺はこれからどうしたらいいと思う?こんなこと聞くのもなんなんだけど」


「何もせんほうがええ」


 え。


「金もうけやったり、何か悪いことをしようとしたり、そんなんはもちろんやけどな。人のためとか、良いことのためにその力を使った場合でも、きっといいことはないわ。まぁ…どうするかはお前次第やけどな」


 婆ちゃんは少し淋しい顔をしていた。




婆ちゃんから色々と話を聞き、俺の中で様々な感情や考えがよぎった。


こんな話を聞いて、なんもしないことなんてあるか。


俺の中で、得体の知れない何かが、少しずつ膨れ上がっている気がした。

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― 新着の感想 ―
お祖母さんは的を得たことをいいましたね。 何もしない方がいいというのは一理あります。 でも、修二はシン君の話では危ない目にあってたような。 あれ、違ったかな。
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