「霧答」
―――注意事項―――
・この小説は東方二次創作品です。キャラクターのイメージなどがずれてる場合がございますご了承ください。
・残酷描写タグは無いですが、東方キャラが消えるお話なのできつい人は見ない方がいいです。
・初投稿なので読みづらい部分や、おかしなところがあるかもしれません。許して。
・この小説内での設定は独自のものです。
霧は、里から出ていた。
朝。
空は晴れている。雨の気配もない。
それでも、家々の間を白い靄が這うように流れている。
「今日は濃いなあ」
そう言った声は、すぐに霧に吸われた。
返事はないが、誰も気にしなかった。
歩ける。働ける。生活はいつも通りだ。
ただ、少しだけ遠くが見えない。
博麗神社では、霊夢が石段の上で立ち止まっていた。
霧はここまで登ってこない。
結界に触れるたび、形を歪めて流れ落ちる。
「……変ね」
異変と言うには、静かすぎる。
だが自然現象にしては、意思がある。
霊夢は御札を一枚取り出し、霧へ放った。
札は、触れた瞬間に力を失い、地面に落ちた。
「拒否、じゃない……素通り?」
理解できない感触だった。
昼過ぎ、魔理沙が霧を割ってやってきた。
「霊夢、今日の霧――」
言いながら、彼女は足を止める。
「……神社は、普通だな」
「ええ。霧は里だけ」
魔理沙は眉をひそめた。
「変だろ。いつもなら、妖怪の誰かが文句言いに来る」
確かに、と霊夢は思った。
これ程の霧なら、
森や湖の連中が先に騒ぐはずだ。
「……来てないわね」
それは事実だった。
理由は、まだ分からない。
里を見下ろす。
人はいる。
声もする。
だが、霧の中で動く影は、どこか均一だった。
「なあ霊夢」
魔理沙が低く言う。
「今日さ、まだ一度も――」
言いかけて、彼女は口を閉じた。
「……いや、いい」
霊夢は何も聞かなかった。
聞かなくても、同じ違和感を抱いている。
本来、ここにいるはずの気配が、足りない。
夕方になっても、霧は薄くならなかった。
灯りをつけても、遠くまで届かない。
里は静かだった。
平和、と言っていいほどに。
「異変、よね」
霊夢が言う。
「だな。でも……派手じゃない」
魔理沙は笑わなかった。
「誰も困ってない。
だから気づかれない」
霊夢は結界に手を当てる。
霧は、境界を越えようとしない。
まるで――人間だけを包むように。
霊夢は、まだ動かなかった。
これが異変だという確信を持てなかったからだ。
霧の中で時間だけが過ぎ、夜になる。
霧はさらに深くなり、
里の輪郭を曖昧にしていく。
それでも人は眠りにつく。
恐怖はない。不安もない。
幻想郷は、まだ何も失っていない。
ただ、
声を上げるはずの存在が、沈黙しているだけだ。
霊夢は、その沈黙を見逃さなかった。
「それ」は、確かに始まっている。




