scene2 聖女の高速思考が暴走
ミナは机に両手をつき、肩で息をしながら必死に自分を落ち着かせようとしていた。
ミナ
「落ち着け、私……深呼吸……大丈夫、順番に考えれば――」
だが、彼女が“順番に考える”ときの結果は、いつだって最悪へ一直線だった。
――思考①
(洗脳されてる……?
魔王に操られて、糸のついた人形みたいに……!
リオの手足が勝手に動かされてる……!?
引っ張られてるの!?
ひええええ!!)
ミナ
「そ、そんなこと許さない……!」
――思考②
(でも……生きてるのよね?
それだけは……よかった……?
いや、全然よくないわ!!
だって操られてるなら、生きてるのが余計に苦し――きゃあ!!)
ミナ
「やっぱり助けに行かないと……!」
――思考③
(傷だらけって……!
ああ、絶対に無茶したのねあの子!!
“ちょっとぐらい平気”って笑って隠すタイプだし!!
ああもう、なんで私が一度でも置いてきたのよ!!)
ミナ
「薬草足りるかしら!? いっそ背負って帰る!?
でも洗脳解除が……!」
ぐるぐるぐるぐる。
聖女とは思えぬ速度で、理解と誤解と不安が渦を巻く。
そして彼女は、すべての思考をひとつの結論に叩き込んだ。
ミナ
「……全部だ!!
全部当たってる可能性がある!!」
机を叩く音が、部屋に鋭く響いた。
ミナ
「よし……助けに行く……!
今すぐ行く!!」
目は決意に燃え、頬は赤く、髪は興奮でふわっと揺れる。
まるで“息子を迎えにいく母親”そのもの。
――ちなみにその頃。
リオとアザルは縁側で昼寝中だった。
風が心地よく、鳥がさえずり、世界は平和そのもの。
もちろん、ミナの暴走だけが戦場だった。




