scene4 確認に行く勇気がゼロ
評議会室に、ようやくもっとも健全な意見が出た。
老魔族E
「……あの、実際どうなっているのか、
一度見に行ってみてはどうじゃろうか?」
その瞬間――空気が凍った。
老魔族B
「な、なにを言い出すのだお前は!
魔王様の御前に立つなど……お、恐れ多いにもほどがある!」
老魔族C
「そ、そうだ! そもそも人間界は遠い!
歩くと三日はかかる!」
老魔族E
「いや、別に歩かんでも……転移陣を使えば――」
老魔族A
「黙れ! もし魔王様が“世界支配の最終段階”におられたらどうする!
余計な邪魔をしてしまうかもしれんのだぞ!」
老魔族B
「そうだそうだ! 今は静かに見守るのが忠誠というもの!」
老魔族C
「だいたい、確認に行く必要などない!
噂があるのだから、どれかは当たっている!」
老魔族E
「……いや、その理屈はおかし――」
老魔族全員
「おかしくない!!」
一斉に威圧され、老魔族Eは口をつぐむしかなかった。
◆
こうして――
「恐れ多い」
「遠い」
「邪魔してはいけない」
「噂があるから十分」
という、四重の謎理論によって、
魔族評議会は“調査”というもっとも重要な手段を完全封印した。
老魔族A
「では、結論だ。
魔王様は順調に世界を掌握しておられる。よって確認不要!」
老魔族たち
「「「異議なし!!」」」
こうして魔界にも、誤解と噂だけが肥大する“情報戦争”が生まれてしまったのだった。




