scene3 証拠ゼロ、想像100%の大議論
黒曜石の会議卓を挟み、
魔族評議会は真っ二つに割れていた。
――しかし、割れ方がひどい。
◆
魔王勝利派の老魔族Aが、杖を叩きつける。
「魔王様は! 世界支配を粛々と進めておられるのだ!
それゆえ報告がないのだ! むしろ誇るべきこと!」
うんうん、と周囲の老魔族たちが頷く。
その内容を理解しているかどうかは疑わしいが、
威勢だけは満点だ。
対して、勇者勝利派――と言っても数名――はおずおずと反論する。
勇者勝利派の老魔族C
「いや……本当に勝っておられるのなら……
せめて魔王城の扉ぐらい……開いているのでは……?」
魔王勝利派の老魔族Bが机をバンッと叩いた。
「お前は魔王様を信じておらぬのか!!」
「ひぃっ」
老魔族Cは一瞬で黙り、肩をすくめる。
しかし勇者勝利派の別の者が、小声ながらも勇気を出して続けた。
「で、でも……城の結界が全く反応しておらぬのは……
もしや、魔王様が……」
「言うでない!!」
老魔族Aが遮る。
「魔王様は常に上を行かれるお方!
凡庸な我らなどに察せぬ策を巡らされておるのだ!」
※推測の粋を軽く越えて妄想に突入している。
勇者勝利派
「いや、でも……」
魔王勝利派
「いいから信じるのだ!!」
勇者勝利派
「す、すみません……」
完全に空気で押し切られた。
◆
結果――
「魔王様はすでに世界掌握フェーズへ移行された」
「今は連絡がないのが正しい」
「むしろ音沙汰がないほど順調である」
という謎理論が大勢を占めることに。
老魔族たち
「「「さすが魔王様……!!」」」
こうして、証拠ゼロ・想像100%の結論が、
魔界全土へと拡散していくのだった。




