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何もしたくない魔王と勇者のスローライフ やる気のない世界の中心で  作者: 南蛇井


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scene2 逆方向の噂が流入

――魔界中央、黒曜石の会議室。


魔族評議会が“魔王勝利説”で盛り上がり、

老魔族たちが勝手に祝杯を始めようとしていたそのとき――。


ドドドドッ!


別の扉が勢いよく開き、血相を変えた別の伝令が飛び込んだ。


「し、失礼しますっ!! 緊急報告!!」


老魔族Aが胸を張って言う。


「また魔王様の偉業か?

 今度は何を征服なされた?」


「い、いえ……! 人間界で奇妙な歌が広まっておりまして――」


「歌?」

老魔族Bが眉をひそめる。


伝令は震える声で続けた。


「“勇者リオが魔王を倒した”と……

 そう歌っている者が多数、とのことで……!」


沈黙。


直後――


「はぁあああ!?」

老魔族Bが机を揺らすほどに立ち上がった。


老魔族Cも目を剥く。


「どういうことだ!?

 さっきは“勇者を支配した”だの、今度は“倒した”だの……!」


老魔族Aは頑なに言い張る。


「そんなはずはない!

 魔王様が負けるなど万に一つもあり得ん!」


しかし――。


老魔族Dが控えめに手を挙げた。


「……じゃがの。

 魔王様、ここ最近、城に戻ってきておらぬのも事実じゃが……」


場の空気が一気に冷える。


「……」


「……」


「……え、まさか、本当に?」


老魔族たちはざわざわと互いに顔を見合わせ、

最高指導者の不在を“今初めて気づいた”かのように動揺し始めた。


老魔族C

「ちょ、ちょっと確認した方がいいのでは?」


老魔族A

「ま、待て落ち着け!

 魔王様はお忙しいお方だ! 帰ってこられないのも当然!」


老魔族B

「ならば、歌い手の噂はなんなのだ!?

 勝ったのか負けたのかどっちなんじゃ!」


老魔族全員

「「「わ、わからん……!!」」」


――魔界は、情報の混線によって混乱の渦に飲み込まれていく。

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