第十七話 魔族評議会の混乱 scene1 魔族評議会、ざわつく開幕
魔界中央。
黒曜石でできた巨大な円卓を囲み、古びた翼と誇り高い角を持つ“魔族評議会”の老人たちが、今日も平和そのものの議論をしていた。
老魔族A
「最近の若者は角が短い。美の基準が乱れておる」
老魔族B
「翼を黒く染めるとかいう流行も理解できん。あれは本来、闇の祝福を受けた者だけに許される色だぞ」
老魔族C
「いやいや、あれは若者なりの自己表現というもので……」
――要するに、どうでもいい話である。
円卓の空気がぬるりと流れる中、
突然、扉が乱暴に開け放たれた。
伝令
「た、大変です!!」
老人たちの視線が一斉に向く。
伝令は息を切らしながら叫んだ。
伝令
「人間界で――“魔王アザル様が勇者を支配した”との噂が広まっております!!」
黒曜石の部屋が一瞬にしてざわついた。
老魔族A
「なんと……!」
老魔族B
「ついに魔王様の時代が来たか……! いや、来てしまったか!」
老魔族Cだけが怪訝そうに眉をひそめる。
老魔族C
「しかし、それほどの大事であれば……
魔王様自ら、何かしらご連絡があるのでは?」
老魔族Aは胸を張り、当然とばかりに言い放つ。
老魔族A
「魔王様はお忙しいのだ。
いちいち我々ごときに知らせる暇などあるまい!」
老魔族B
「確かに……! 人間界の征服は忙しいであろうしな!」
老魔族C
(いや、魔王様はわりと真面目に報告するタイプでは……?)
そんな控えめな疑問は、熱気に飲まれてかき消された。
黒曜石の会議室には、
“魔王勝利説”を信じ切った歓声にも似たざわめきが渦を巻く。
老魔族A
「祝え! 我らが主の勝利を!」
老魔族B
「まだ勝利と決まったわけでもないのだが……良い、祝え!」
こうして魔族評議会は、
事実確認ゼロのまま、
“魔王が勇者を支配したらしい”という噂を見事に信じ込んだのであった。




