scene5 グラント宰相、混乱を見てさらに判断を誤る
王都広場の喧騒が、執務塔の窓からでも響いてくる。
怒号、議論、泣き声、笑い声。
“平和な混乱”という奇妙な空気が街を覆っていた。
その様子を上階から見下ろしていた宰相グラントは、
額に汗を浮かべながら呟く。
グラント
「……いかん。
情報が……分裂している……!」
側近A
「あの、そもそも宰相が勝手に――」
グラント
「こうなったら、さらに “勇者勝利説” を押し切るしかない!」
側近A
「聞けよ!!」
◆
宰相は執務室へ飛び込み、机の上に新たな指示書を積み上げる。
グラント
「追加の広報を出す!
“勇者リオは魔王を完全に討伐し、世界の光となった”
――この文言でポスターを印刷だ!」
側近B
「宰相、既に似たようなポスターが王都全体に……」
グラント
「ならもっと派手にする!
英雄の像を建てよう!
酒場には祝杯の無料券を!
神殿には“魔王滅殺祈願祭”を開催させろ!」
側近たちは全員、顔を覆った。
側近A
「宰相……民は混乱しています。
いったん落ち着いて、事実確認を――」
グラントは側近を真顔で見つめ、
信じられないことを堂々と言い放つ。
グラント
「調査などしていたら、
“都合の悪い真実” が出てくるかもしれんだろう!」
側近A
「それは困りますね!? ではない!!」
グラント
「情報は速さが命だ!
事実より、まずは“統一された空気”を作るのだ!」
側近B
「空気で国を統一しないでください……!」
◆
こうして宰相の独断により、
王都中に「勇者勝利!」の声がさらに増幅していく。
だが同時に、裏で漂う“魔王勝利説”は消えず、
両者が強烈にぶつかり合った結果――
王都の混乱は、
もはや誰にも収拾できないレベルまで加速していくのだった。




