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何もしたくない魔王と勇者のスローライフ やる気のない世界の中心で  作者: 南蛇井


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scene5 グラント宰相、混乱を見てさらに判断を誤る

王都広場の喧騒が、執務塔の窓からでも響いてくる。

怒号、議論、泣き声、笑い声。

“平和な混乱”という奇妙な空気が街を覆っていた。


その様子を上階から見下ろしていた宰相グラントは、

額に汗を浮かべながら呟く。


グラント

「……いかん。

 情報が……分裂している……!」


側近A

「あの、そもそも宰相が勝手に――」


グラント

「こうなったら、さらに “勇者勝利説” を押し切るしかない!」


側近A

「聞けよ!!」



宰相は執務室へ飛び込み、机の上に新たな指示書を積み上げる。


グラント

「追加の広報を出す!

 “勇者リオは魔王を完全に討伐し、世界の光となった”

 ――この文言でポスターを印刷だ!」


側近B

「宰相、既に似たようなポスターが王都全体に……」


グラント

「ならもっと派手にする!

 英雄の像を建てよう!

 酒場には祝杯の無料券を!

 神殿には“魔王滅殺祈願祭”を開催させろ!」


側近たちは全員、顔を覆った。


側近A

「宰相……民は混乱しています。

 いったん落ち着いて、事実確認を――」


グラントは側近を真顔で見つめ、

信じられないことを堂々と言い放つ。


グラント

「調査などしていたら、

 “都合の悪い真実” が出てくるかもしれんだろう!」


側近A

「それは困りますね!? ではない!!」


グラント

「情報は速さが命だ!

 事実より、まずは“統一された空気”を作るのだ!」


側近B

「空気で国を統一しないでください……!」



こうして宰相の独断により、

王都中に「勇者勝利!」の声がさらに増幅していく。

だが同時に、裏で漂う“魔王勝利説”は消えず、

両者が強烈にぶつかり合った結果――


王都の混乱は、

もはや誰にも収拾できないレベルまで加速していくのだった。

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