scene4 王都広場での市民大論争
昼過ぎ、王都の中央広場。
つい先ほどまで祝いの太鼓が鳴り響いていた場所は、
今や混乱と怒号の渦に変貌していた。
市民A
「勇者が勝ったに決まってるだろ! 公式発表を見てないのか!?
“魔王討伐成功” ってはっきり書いてあったぞ!」
市民B
「公式が正しいわけないだろ!
旅人も商人も“魔王が勝った”って言ってたんだ!
現場の声の方が信用できる!」
市民C
「だったら……なんで王都はこんなに平和なんだよ!?
魔王が勝ってるなら、ここに攻めてきてもおかしくないだろ!」
市民D
「……そ、それは……魔王が静かに支配を進めてるから……だと思う……
気づかないうちに、もう……心を操られてるとか……」
市民A
「操られてたらこんな言い争い起きねえだろ!」
市民B
「いや、操られてるから言い争ってるのかもしれない……!」
市民A&C
「どういう理論だよ!!」
◆
議論はさらにエスカレートし、別グループが加わる。
市民E
「いや待て、どっちも負けたって説もあるぞ!
共倒れで両方消息不明らしい!」
市民F
「共倒れ!?
じゃあ今この平和は……どこの誰のおかげなんだよ!?」
市民E
「知らん! だが共倒れなら……平和は続くんじゃないか!?」
市民G
「それはそれで怖いだろ!“次の魔王”とか出てくるかもしれないし!」
――もはや議論はカオスそのもの。
◆
ただし、どれだけ声を荒らげても、
誰ひとりとして “本人たちを確かめに行こう” とは言い出さなかった。
理由は揃いも揃って同じ。
「危険だから」
「遠いから」
「勇者か魔王が本気なら“向こうから来るはず”だから」
「だから来ないということは安全」
という、妙に納得感のあるようで全く説得力のない謎理論。
広場全体が言い合いと不安でざわつくなか、
誰もが結論を出せず、
ただ“来ないなら平和”という曖昧な安心にしがみついていた。
――こうして王都は、
二つの噂に振り回されながらも、
結局は何も行動しないという
「混乱してるけど平和」な奇妙な午後を迎えるのであった。




