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何もしたくない魔王と勇者のスローライフ やる気のない世界の中心で  作者: 南蛇井


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scene3 だが同時刻、別ルートから“魔王勝利説”が到達

勇者勝利の祝宴が王都を包む、そのほぼ同時刻。


城門の外から続々と人々が押し寄せていた。

旅人、行商人、辺境の村から来た伝令。

彼らが口を開くたび、空気が一気に冷えていく。


旅人

「いや、違うぞ! 魔王が……魔王が勝ったんだ!」


門兵

「は? 何を言って……」


旅人

「勇者リオは魔王の手中にあるって聞いた!

 “鎖に繋がれ、魂まで支配された”って……!」


その声は、すぐ周囲の商人たちの耳にも入った。


商人

「お、おい、それ本当なのか!?

 うちの取引先も『勇者は魔王の操り人形になった』って……!」


別の旅芸人も割り込む。


旅芸人

「魔王が新しい軍勢を築いてるらしい!

 死者を操る術まで手に入れたとか……!」


誰も確証を持っていない。

だが、尾ひれと背びれが盛られた噂ほど、人の心にはよく刺さる。



瞬く間に、先ほどまで祭りのようだった広場に“不穏なざわめき”が戻り始めた。

勇者の旗がはためく下で、人々は顔を寄せ合い、不安げに囁きあう。


市民A

「さっきまで勝ったって聞いてたのに……

 本当は負けてたのか?」


市民B

「だって“操り人形”だぞ……?

 そんなの信じたくないけど、妙にリアルだよな……」


市民C

「王国に近々現れるって噂はどうなんだ!?

 本当に軍勢が来るのか!?」


市民D

「おい、冗談じゃないぞ!?

 俺、さっき勇者に乾杯したばっかりなんだが!!」


市民の顔色は一気に青ざめ、

宴会ムードは、まるで水を打ったように静まり返った。


太鼓の音も止み、酔っ払いの歌声も消える。

旗を掲げた子どもたちでさえ、戸惑いに足を止める。


――たった数時間前の“平和宣言”が、

今や“恐怖の前触れ”へと急転直下してしまったのだ。


そして王都は、

「どっちが本当なんだ……?」

という不安と混乱の渦に再び巻き込まれていく。

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