scene3 だが同時刻、別ルートから“魔王勝利説”が到達
勇者勝利の祝宴が王都を包む、そのほぼ同時刻。
城門の外から続々と人々が押し寄せていた。
旅人、行商人、辺境の村から来た伝令。
彼らが口を開くたび、空気が一気に冷えていく。
旅人
「いや、違うぞ! 魔王が……魔王が勝ったんだ!」
門兵
「は? 何を言って……」
旅人
「勇者リオは魔王の手中にあるって聞いた!
“鎖に繋がれ、魂まで支配された”って……!」
その声は、すぐ周囲の商人たちの耳にも入った。
商人
「お、おい、それ本当なのか!?
うちの取引先も『勇者は魔王の操り人形になった』って……!」
別の旅芸人も割り込む。
旅芸人
「魔王が新しい軍勢を築いてるらしい!
死者を操る術まで手に入れたとか……!」
誰も確証を持っていない。
だが、尾ひれと背びれが盛られた噂ほど、人の心にはよく刺さる。
◆
瞬く間に、先ほどまで祭りのようだった広場に“不穏なざわめき”が戻り始めた。
勇者の旗がはためく下で、人々は顔を寄せ合い、不安げに囁きあう。
市民A
「さっきまで勝ったって聞いてたのに……
本当は負けてたのか?」
市民B
「だって“操り人形”だぞ……?
そんなの信じたくないけど、妙にリアルだよな……」
市民C
「王国に近々現れるって噂はどうなんだ!?
本当に軍勢が来るのか!?」
市民D
「おい、冗談じゃないぞ!?
俺、さっき勇者に乾杯したばっかりなんだが!!」
市民の顔色は一気に青ざめ、
宴会ムードは、まるで水を打ったように静まり返った。
太鼓の音も止み、酔っ払いの歌声も消える。
旗を掲げた子どもたちでさえ、戸惑いに足を止める。
――たった数時間前の“平和宣言”が、
今や“恐怖の前触れ”へと急転直下してしまったのだ。
そして王都は、
「どっちが本当なんだ……?」
という不安と混乱の渦に再び巻き込まれていく。




