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何もしたくない魔王と勇者のスローライフ やる気のない世界の中心で  作者: 南蛇井


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scene2 国中が一時的にお祭り騒ぎ

王都の中央広場は、朝から異様な熱気に包まれていた。


最初は、小耳にはさんだ噂話だった。


「勇者リオが魔王を倒したらしいぞ!」


その声が、瞬く間に市場の魚売りの女将へ、

そこから香辛料屋へ、

そして旅商人たちへと伝わり、

気がつけば町中が同じ話題で沸き立っていた。


「ついに平和が戻った!」「これで夜道も怖くないな!」


子どもたちが石畳を駆け回り、

パン屋は売れ行きの良さに嬉々として追加のパンを焼き上げる。


宿屋では、荷物を下ろした冒険者が真っ先に受付へ顔を寄せていた。


冒険者

「本当か?魔王が倒れたって!」


受付嬢

「ええ、公式広報が出たらしくて……もう町中その話で!」


その一方、酒場はというと――すでに混沌の渦にあった。



「おい、樽をもうひとつ運んでこい!今日は祝杯だ!」

「勇者リオに乾杯だ!」

「いやー、あの子が魔王をねえ……時代だな!」


誰が言い出したのかも不明なまま、

“勇者勝利祝いの宴会”が勝手に始まり、

酒場中の客が全員立ち上がってジョッキを掲げる。


歌い出す者、踊り出す者、なぜか剣を振り回し始める者まで現れ、

店主は頭を抱えながらも笑顔を崩せない。


店主

「……壊すなよ?壊すなよ!?いや壊すんじゃねぇ!!」



町中には、即席で作られた旗が乱立する。


布に絵の具をぶちまけただけのものから、

器用な裁縫屋が徹夜で縫い上げた立派な幕まで。


「ありがとう勇者リオ!」

「我らが英雄に祝福を!」


そんな言葉が風にたなびき、

いたるところで太鼓や笛の音が鳴り響く。



その喧騒が王城にも届いた頃。

王太子レオンハルトは、執務室の窓から街の様子を眺めていた。


レオンハルト

「……まあ、国が元気ならいいか」


本音では「まだ確認してないのに勝手に盛り上がるなよ」と思っていた。

しかし、民が笑い、店に活気が戻っている光景を前にすると、

その苦言も喉の奥で消えていく。


レオンハルト

「宰相の暴走だろうけど……うん、まあ……今日は好きに騒がせてやるか」


ため息とともに肩の力を抜き、

机上の書類をぱたんと閉じた。


――こうして王国は、

本当に平和が戻ったと信じ込み、

短い“祝宴の時代”へと突入したのであった。

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