scene2 矛盾報告の乱れ撃ち
レオンハルトが「放置で」の一言を放ち、
ようやく椅子の背にもたれかかった、その瞬間だった。
再び、執務室の扉が爆音とともに開く。
兵士
「ほ、報告! 魔王が勇者を支配したとの噂が――!」
レオンハルト
「…………どっちだよ!!」
執務室に王太子の絶叫が響き渡る。
窓ガラスまで揺れた気がした。
側近と新しく来た兵士が、互いに睨みつけるようにして言い合う。
側近
「い、いえ! 勇者殿が魔王を討ち滅ぼしたという情報の方が確度は高いはずです!
あのお方なら……いや、たぶん……」
兵士
「ですが、魔王軍の残党と思しき魔族が各地で
“人間は恐ろしい、勇者は魔王をも支配する化け物だ”
と怯えながら逃亡しているとの証言もありまして!」
側近
「そ、それは……彼らの誤解では!? もしくは勇者殿の…威圧? いや、威圧はないか……」
兵士
「なら勇者が勝ったという話はどこから出たのですか!」
側近
「そ、それはそちらこそ!」
レオンハルト
「うるさい!!」
二人同時に黙る。
時計の秒針の音がやけに耳につくほど静かになった。
レオンハルトは両手で頭を抱え込む。
(どっちも……どっちも本当っぽくないのが一番腹立つ……
あいつら、なんでいつもこう迷惑かけずにいられないんだ……)
彼の嘆きは王都の天井に吸い込まれたが、
この時点で誤解はすでに国内を雪崩れのように広がりつつあった。
王太子のストレスだけが、静かに積み上がっていくのだった。




