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何もしたくない魔王と勇者のスローライフ やる気のない世界の中心で  作者: 南蛇井


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第十五話 王国の混乱 scene1 朝の執務室 ― “噂”という名の爆弾

王都の朝はいつも騒がしい。

けれど、王太子レオンハルトの執務室はもっと騒がしい。理由は一つ。

机に積み上がった書類の山が、ついに天井に届きそうだからだ。


レオンハルトは深々と椅子に沈み込み、片手でこめかみを押さえた。


(……税収報告に、領地の境界争い。貴族たちの我儘の山。

 昨日は北西で盗賊、今日は南部で農民一揆。

 もう勇者とか魔王とか、どうでもいい……)


その瞬間、執務室の扉が勢いよく開き、側近がほとんど転がり込むように飛び込んだ。


側近

「た、大変でございます! 噂が……!」


レオンハルト

「今度は何だ。南方で巨大ウサギが爆増でもしたか?

 ……お前の顔、そういう時の顔だぞ」


側近

「そ、そんな可愛い話ではございません!」


差し出された報告書には、太字でこう記されている。


『勇者リオ、魔王アザルを討ち滅ぼした――との噂、各地に拡散』


レオンハルト

「…………本当に?」


一瞬、希望の光が差した気がした。

だがすぐに現実が冷たく覆いかぶさる。


(いや……リオが本当に魔王討伐したなら、

 絶対に誰より先に僕のところへ来て“褒めて!褒めて!”って言ってくるはずだ)


レオンハルトは書類をつまむように持ち上げ、じっと見つめた。


レオンハルト

「うーん……あり得なくは、ない……のか?

 いや、いや、でも……あいつが黙ってるわけが……」


首をかしげているところへ、扉がまた叩き割れる勢いで開いた。


兵士

「王太子殿下! 魔王が勇者を支配し、操り人形にしたという噂が――!」


レオンハルト

「どっちだよ!!」


兵士

「はっ、申し訳ありません! 現段階では収拾不能なほど情報が錯綜しておりまして!」


レオンハルトは机の上に突っ伏し、ぼそりと呟く。


レオンハルト

「……リオもアザルも帰ってこないし、

 別に国に危険が迫ってる報告もないし……」


顔だけ上げて言い放つ。


レオンハルト

「面倒だ。放置で」


側近&兵士

「「えっ」」


レオンハルト

「調査は……そうだな、気が向いたら。

 危険がないならそのままでいいだろう、うん」


その無責任極まりない判断は、

この瞬間、王国中に広まりつつあった“誤解”を、

むしろ強固なものへと固定してしまうのだった。

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