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scene4 夜のランプと小さな笑い
食後の片付けを終えると、小さな家には温かな静けさが満ちた。
ランプの橙色の灯りが、ゆっくりと揺れながら部屋の木の壁を照らす。
リオは机に向かい、今日歩いた畑の周りを思い出しながら、
村の簡単な地図を描いていた。線はまだ不器用だが、
土の匂いや風の抜けた道がそのまま紙に残っていくようだった。
その隣でアザルは、丁寧にハーブを仕分けている。
乾燥した葉が指先でサラサラと鳴り、
鼻先にはかすかな香りが漂う。
どこか懐かしく、どこか新しい――
そんな二人だけの夜の音。
ふと、同じタイミングで顔を上げた。
目が合う。
理由はない。けれど、微笑みが同時にこぼれた。
「……」
「……」
言葉はなかった。
けれど、二人の笑みはまるでこう告げていた。
――今が、心地いいね。
外の世界の運命も、肩書きも、過去の重荷も、
ランプの淡い光の中では遠い夢のように薄れていく。
紙の擦れる音とハーブの香り。
小さな家に流れる、静かな夜の時間。
そこにはただ、
“勇者と魔王”ではなく
“リオとアザル”の、穏やかな笑いだけがあった。




