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scene3 夕暮れ、二人で並べる食卓
夕暮れの柔らかい光が、木造の小さな家の台所を満たす。
窓の外には、遠く丘のシルエットが茜色に染まっていた。
アザルはまな板の横で味見をして眉をひそめる。
「……うーん、ちょっと塩が強いかもしれない」
リオは笑いながら、整えた皿をテーブルに並べる。
「お前の料理に文句言うなんて、贅沢かもしれないぞ」
小さな声で返すアザル。
「……いや、でも、これも美味しい方だと思う」
二人の共同生活は、いつの間にか自然な日常になっていた。
戦う日々の緊張も、肩書きの重みも、ここにはない。
この家は、ただ二人の“家”であり、彼らの時間のすべてを包んでいる。
向かい合って夕食を食べるひとときは、
二人の一日の中で最も静かで安らぐ瞬間となる。
リオ(心の声)
(誰も俺に期待しない。怒られない。命令されない……
こんな生活があったんだな……)
アザルもまた、心の奥で同じ安堵を感じていた。
ふと目を合わせると、互いに小さく笑みを交わす。
外の世界では魔王と勇者だとしても、
ここではただ二人の“暮らし”が存在していた。
柔らかな夕日の中、二人の影がテーブルに静かに重なる。




