scene4 郵便屋メルが“世界の懸け橋”になる
村の朝。
鳥の声と一緒に、もう一つの元気な声が響く。
「おはよー! 今日も配達行ってきまーす!」
元気よく駆けてきたのは、郵便屋のメル。
年若いが、仕事の範囲は村どころか――
魔王城から勇者パーティ、王都の役所まで “全部” である。
世界が緊張状態にあるはずの今、
なぜかただ一人、どこへでも普通に行ける存在。
今日も肩に大きな郵便袋を下げ、村を出ようとしていた。
メル「今日は勇者パーティのキャンプ寄るけど、何か伝言ある?」
その聞き方があまりにも気軽で、
まるで「隣の家に行くけど何かほしい?」レベル。
リオ「……別に……」
アザル「どうかお気をつけて」
メル「はーい! じゃあまた夕方ね!」
ぱたぱたと手を振りながら、
メルは風に溶けるように村道を走り抜けた。
◆勇者パーティ側
メルはすっかり慣れた道のりで、勇者パーティの野営地へ。
メル「リオ君元気だったよー!
あと、魔王様も元気!」
ガルド「おお、そうか。何よりだ」
シルフィ「仲良くやっているんですね……ふふっ」
ミナ「まあ、あの二人なら争わないでしょー」
誰も驚かない。
誰も焦らない。
“勇者と魔王が一緒に暮らしている”という事実が、
この人たちにとっては「そうだろうな」程度のものらしい。
◆魔王軍側
次にメルは魔王城へ。
魔族兵「お、メル嬢。今日も元気だな!」
メル「うん! 魔王様すっごく元気だったよ!
それと勇者さんも元気!」
魔族兵「そっか。なら安心だ」
マギル「……もう、追う意味……ないですね……」
魔王軍でさえ驚かない。
むしろ“平和で良かった”という空気のほうが強い。
◆世界の認識
両陣営とも、心の底ではこう思っている。
(あの二人が仲良くしてるなら……世界は平和だ)
勇者と魔王が消えても、
誰も焦らず、誰も騒がない。
むしろ――
“二人の平和な日常”が世界の安定だと、
全員が本気で信じていた。
◆オチ
結局、勇者と魔王の失踪事件は、
「元気ならいいか」
という世界規模の認識で落ち着く。
そして世界の平和は――
郵便屋メルの元気な雑談で、
今日も、何の問題もなく保たれているのだった。




