scene4 アザル:薬草茶に没頭 ―「恐れられない世界って……」
同居二日目の昼下がり。
アザルは家の片隅に小さな作業台を作り、
魔界から持ってきた薬草と、この村で摘んだ野草を並べていた。
指先を軽く振ると、淡い魔力がふわりと舞い上がり、
乾燥した葉が空中でやさしく回転しながら焙煎されていく。
ぱち、ぱち、と小さな火の粒。
そして――
ふわり。
香ばしくて、どこか懐かしい香りが部屋に満ちた。
その瞬間、窓の外から小さな顔がひょこっと覗く。
村の子ども
「いい匂い〜! なんか落ち着く〜!」
アザル
「え、えっと……魔力で、少し加工してて……」
子どもは目を輝かせる。
「すごーい! 飲ませて飲ませて!」
いつの間にか、近所の村人も集まっていた。
村人
「アザルちゃんの茶、飲むとよく眠れるんだよ〜。
昨日の、あれは効いたねぇ。腰痛も軽くなったわ」
アザルの手が、ぴたりと止まる。
アザル
「……わ、私の……魔力で……?」
村人
「そうそう。ありがとねぇ。
こういうの作れる人、うちの村だと貴重なのよ」
眉間に皺を寄せる者もいない。
身を引く者もいない。
ただ「手先の器用な新住民」に対する、自然な感謝だけ。
アザル(心の声)
(……恐れられず、利用もされず、ただ喜ばれる……
私の魔力が……誰かを傷つける道具じゃなくて……
“役に立つ特技”って扱われてる……
こんな世界……あったんですね……)
胸の奥に、ぽうっと灯りがともったような温かさが広がる。
その温度に、自分でも驚くほど心が揺れた。
アザルはそっと微笑み、
焙煎に使う魔力の火を、ほんの少しだけ優しい色に変えた。




