第十一話 辺境の小村に到着 ―「肩書きが消える場所」 scene1 世界の端の、“風が優しい場所”
森を抜けた瞬間、
世界の色がふっと変わった。
ずっと漂っていた霧が、まるで道を譲るようにほどけていき、
金色の陽光が一気に視界へ流れ込む。
その先に広がっていたのは――
静かな谷間に寄り添う、小さな村だった。
畝の曲線がやわらかい畑が広がり、
風がそよぐたびに麦の穂が金色の波をつくる。
木造の家の煙突からは、
白い煙がほこほこと上り、
今日もこの村が“いつものように”動いているのが分かる。
村の奥では羊が「めぇ〜」と
ゆるすぎる声を上げ、
遠くで子どもが木の枝を振り回しながら、
「くらえー! 勇者ぎりー!」
と剣士ごっこをしている。
――世界がこんなにも平和だっただろうか?
陽光はあたたかく、
風は頬を撫でる指先のようにやわらかい。
この場所だけ、季節の歩みがひとつ遅れているようだ。
リオは思わず立ち止まり、胸の奥がゆるむのを感じた。
リオ(心の声)
(……なんだ、この空気……
緊張が、全部溶けていく……)
隣でアザルも、そっと深呼吸をする。
魔界の濃い魔力の気配も、城の喧騒もここにはない。
アザル(心の声)
(……魔界より空気がきれい……
そして静か……こんな場所があったなんて……最高……)
ふたりは顔を見合わせることもなく――
ただ、同じ速度で歩みをゆるめた。
まるでこの村が、
「ゆっくりしていきなさい」と
両手を広げて迎えてくれているかのように。




