scene3 周囲の反応(森の外の“平和すぎる捜索”)
▼勇者パーティ側:
──平和ゆえの鈍感、という名の信頼。
ガルドは森の中からふっと聞こえた声に眉を上げた。
「……あれ? 今、リオの笑い声しなかった?」
しかし、ミナは肩をすくめて麦茶を飲んでいる。
「気のせいでしょ。この森、魔族の方が道案内してくれるくらい平和なんですよ?
リオが笑ってるなら元気な証拠だし」
シルフィに至っては、
ハーブティーを注ぎながら優雅に微笑んだ。
「誰かと話してたのかもしれませんね。
……まあ、帰ってきますよ。お茶、どうぞ?」
ガルドは一応は心配するふりをしつつ、
(いや、あいつ本当に迷っただけだろ……)
と内心で結論づけていた。
このパーティ、致命的に危機感がない。
だが、それはリオを信頼しているからであり、
そして“この世界が争わない”と分かっているからだ。
▼魔王軍側:
──深刻に見えて、実は誰も深刻じゃない。
一方、魔王軍は魔王軍で、森の手前で足跡を見つけていた。
部下Aが木の根元を指差す。
「魔王様の靴跡があるような……?」
だがすぐ隣の部下Bがあっさり否定する。
「いや、多分別の魔族のですよ。
魔王様が森で走るわけないですし」
部下Cはメモ帳を取り出し、
「ところで今日の夕食、チキンのトマト煮でいいですか?」
と、捜索そっちのけで献立会議を開始。
ただ一人、参謀長マギルだけが険しい顔で周囲を見回し――
……しかし、その眉間のしわもすぐに緩む。
(……まあ、どうせ戻るか。うん。戻るな)
魔王アザルの“サボりグセ”はもはや軍内の共通認識だった。
▼そして“見つけても追わない”世界
両陣営の空気はどこまでもゆるい。
もし運よく魔王と勇者を見つけても、
きっとこう言うだろう。
「あ、休暇ですか? どうぞごゆっくり」
誰も争う気がない。
誰も戦わせようともしない。
だから、捜索は進まない。
いや――進める気がない。
この世界の平和は、こういう“やる気のなさ”で成り立っているのだ。
そして、そのおかげで――
アザルとリオは誰にも邪魔されず、
静かに“逃亡”を始められた。




