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scene5 仲間たち、心配する気ゼロ
普通なら――勇者がいなくなるのは国家レベルの大問題だ。
だが、勇者リオの仲間たちは違う。
“あいつは迷うもの”という共通認識が、深く、静かに根付いている。
ガルドが立ち上がり、軽く腰を鳴らした。
「迎えに行くかー。
あいつ、石碑の前を三周するタイプだし」
ミナが頬杖をついたまま、ひらひらと手を振る。
「温泉の湯気で方向感覚なくしたって言いそうですよね。
“霧のダンジョンかと思った”とか」
シルフィは落ち着いた手つきで湯飲みを並べていく。
「じゃあ戻ってくるまでお茶でも淹れましょう。
どうせ戻る頃には、喉も渇れてますし」
ガルドは思わず天を仰いだ。
「いや誰も危機感ないのスゴいな?
一応、うちの勇者なんだけど?」
三人の空気は、あくまで平穏。
“あのリオのことだから、どうせそのうちひょこっと現れる”
そんな絶対的な信頼――いや、諦めに近い何かが、パーティ全体を包んでいた。




