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scene7 打ち解けるスピードが異常
森の奥で、鳥がピィ、と短く鳴いた。
霧の中を、湿り気を帯びた涼しい風がすり抜けていく。
その空気に背中を押されたように、
二人の会話は、初対面とは思えない自然さで流れはじめた。
アザルがぽつりとつぶやく。
「……この森、静かですよね。好きです」
リオも同じようにぼんやり景色を眺めたまま答える。
「俺も。ここなら誰も“働け”って言わないし……」
勇者と魔王という立場のはずなのに、
どちらの声にも、疲れた社会人の雑談めいた親近感があった。
アザルはふと膝を見下ろし、
編み物セットを持ってくればよかったと軽く後悔する。
こんなに落ち着くなら、あの新作途中のマフラーを編めたのに、と。
一方でリオは、手の中に“温泉まんじゅう割引券”が握られていることに今さら気づき、
(なんで俺、魔王の前でこれ持ってんだ)と内心で赤面していた。
けれど、それを隠すでもなく、
アザルもリオも、自分の“日常の延長線の思考”をそのまま抱えたまま話している。
戦う気なんてかけらもない。
むしろ二人の関心は、完全に“日常”へ向いていた。
霧の休憩所には不思議なゆるさが満ち、
まるで何年も前から知り合いだったかのように、
二人は違和感なく隣に座っていた。




