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scene4 同じ休憩所へ、同じタイミングで到着
休憩所には、誰もいなかった。
木漏れ日が円形に広がり、霧は白い薄膜のように漂う。
遠くでは鳥が、まるで“ここは平和区域です”と宣言するかのように、のんびりした声で鳴いている。
リオが木の階段を上ったのと、アザルが霧の向こうから姿を現したのは、本当に同じ瞬間だった。
二人の視線がふっと重なる。
――その一秒で理解する。
リオ(心の声)
(……あ、魔王だ)
アザル(心の声)
(……あ、勇者だ)
初対面なのに、妙に察しが良すぎた。
本来なら剣が抜かれ、魔力が迸り、風が唸る――
そんな“運命の邂逅”が起きる……予定の場所。
だが、実際は。
誰も構えない。
誰も叫ばない。
ただ、疲れ切った社会人のような目を交換しただけだった。
リオはびしょ濡れの犬みたいな顔で心の中で呟く。
(帰りたい……温泉入りたい……)
アザルはアザルで、黒斗篷の裾をぱたぱたはたきながら思う。
(今日はもう仕事したくない……)
気まずい沈黙が、霧のようにじっとりと降りてくる。
どちらからも「戦う」という単語が一切出てこない。
それがかえって、状況の異常さを際立たせていた。




