表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
何もしたくない魔王と勇者のスローライフ やる気のない世界の中心で  作者: 南蛇井


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

38/155

scene2 リオの夕方のため息

湯雲の里は、夕暮れになると空も湯気も同じ茜色に染まる。

 展望温泉の縁に腰を下ろしたリオは、湯上がりの体に心地よい涼風を受けながら、ぼんやりと遠くを眺めていた。


 遠く――はるか向こう。

 霞の向こうにあるはずの魔王城の方角を、ただ目で追う。


 今日の“戦闘”は、驚くほどあっさり終わった。

 森で遭遇した魔族は形式的に名乗り、形だけの攻撃を一度繰り出した後、

「では、また……」

 と気まずそうに退散していった。


 そのおかげで、書類上の勇者活動は完了。

 怪我もなく、仲間たちは温泉と食事に夢中。

 胸の奥に溜まっていた重しが、ほんの少しだけ軽くなった。


 湯気がふわりと昇り、夕空を揺らす。


 リオは膝に肘を乗せ、ぽつりとつぶやいた。


「……戦わなくて済む場所で暮らしたいなぁ……」


 それは誰に聞かせるでもない、本音そのもの。

 勇者としての義務感――

 守らなきゃいけない、期待に応えなきゃいけない。

 そんな思いと、

 ただ普通に、静かに暮らしたいという、ありふれた願いの狭間で。


 彼の吐息は、ゆっくりと夜へ溶けていった。


 夕空は茜から群青へ。

 その色の変わりゆく空を、同じ時間、遠く離れた場所で魔王も見上げていることなど、リオはまだ知らなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ