scene4 魔族偵察兵が出る”と噂の森へ
森に入った瞬間、リオは姿勢を正した。
ここは――噂に名高い、“魔族偵察兵が出没する危険地帯”。
本来なら、剣に手を添え、気配を研ぎ澄まし、
緊張した空気が流れるはずの場所。
……のはずなのだが。
「ねぇリオくん!ここ景色いいじゃん。
お弁当食べよ!」
ミナの声は、まるで遠足のテンションそのものだった。
木漏れ日たっぷりの草地に、ミナは勢いよくレジャーシートを広げた。
開いた弁当箱には色とりどりのサンドイッチとフルーツ。
「……いや、ここ危険地帯だからね!?
ピクニック会場じゃないからね!?」
リオは慌てて言うが、
ミナ「だいじょうぶだって〜♪」
あまりにも軽い返答に心が折れかける。
シルフィは木陰に腰を下ろし、静かに便箋を広げていた。
彼女の筆は走る。
(弟子へ……昼食は食べた?薬は飲んだ?
私は今、森でピクニックを――いえ、仕事中……仕事中です……)
内容は半分、罪悪感との戦いである。
ガルドはと言えば、大剣を横に置き、
それを枕代わりにして既に寝息を立てていた。
「……お前、戦場でも寝られるだろ……」
リオは呆れながらも、少し羨ましい。
とはいえ、勇者として最低限の責任感はある。
リオはサンドイッチを手にしながらも、一応周囲を見渡す。
(誰か来てもおかしくない……
ピクニックしてる場合じゃない……はずなんだけど……)
しかし、あまりにも森が平和すぎた。
陽ざしはぽかぽか、風は心地よく、鳥のさえずりはのんびり。
(……この空気の中で“魔族襲来”って、
逆にシチュエーションとして無理があるだろ……)
もうツッコむ元気も尽きかけている。
そして、勇者パーティーは完全に“旅の途中の昼休み”として、
危険地帯とは思えぬほど平和に昼食を楽しむのだった。




