18/155
scene6 任命式クライマックス(茶番)
任命式の締めくくりとして、
国王が両手を大きく広げた。
その動作だけは、妙に堂々としている。
観客も一応、ざわっと期待するように姿勢を正した。
「――見よ!
我が魔法により、勇者の旅立ちを祝福せん!!」
国王が、胸の前で印を結ぶ。
大仰なポーズのまま、深呼吸。
そして——
パチッ。
小さな火花が指先で弾けた。
……それだけだった。
煙も出ない。
光も伸びない。
ただ、乾いた火打石のような火花が一つ。
国王は数秒固まり、
額にじわり汗を浮かべながら無理に胸を張った。
「……む、むぅ!!
今年は調子が悪いようだ!」
取り繕う声が広場に響く。
しかし観客席からは、遠慮のないぼそぼそ声が返ってきた。
「毎年そうだろ……」
「去年も火花だったよな」
「むしろ今年は出た方じゃない?」
王都の民は慣れすぎていた。
リオはため息を飲み込みつつ、
火花の残り香もない空気を見上げる。
(……王様の魔力、年々減ってる気がする)
だが国王は気づかないふりをし、
まだ堂々と両手を上げたままだ。
儀式は、カッコつけたまま終わるはずだった。
——火花ひとつの、勇者任命クライマックス。




