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scene5 市民のリアクション
任命式が進むにつれ——
観客席の空気は、どうしようもなく“ゆるい”方向へと落ち着いていた。
屋台のパンを片手に持った男性が、
噛みちぎりながら片手だけひらひら振る。
「がんばれー(棒)」
その声に熱さはまったくない。
応援というより“声を出してみた”程度のものだった。
周囲では子どもたちが座り込み、
去年を思い出すように顔を見合わせている。
「ねえ、おかあさん」
「今年も昼には帰ってくるの?」
母親はパンを包んでいた紙を折りたたみながら、
あまりに当然のように答えた。
「帰ってくるわよ。
夕飯は普通に家で食べられるわよ」
「そっかーー」
子どもは安心したように笑う。
その会話は周囲にも聞こえており、
リオの耳にもばっちり届いた。
(……もう恒例行事じゃん……)
勇者としての誇り?
使命感?
そんなものは、この空気の前では霧散していく。
むしろリオは思うのだった。
(家に帰って昼寝したい……)
任命式と言うにはあまりに牧歌的な、
王都のひなたぼっこ時間が流れていた。




