表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
何もしたくない魔王と勇者のスローライフ やる気のない世界の中心で  作者: 南蛇井


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

134/155

scene2 同時セリフ

丘の向こうに見える村の灯りは、

 勇者救出隊から見ても、魔王救出隊から見ても、同じ色で揺れていた。


 距離は違う。

 道も違う。

 だが、向いている方向だけは同じだった。


勇者救出隊


 ミナは胸の前で手を握りしめ、灯りを見つめる。


「リオ……待ってて」


 それは祈りであり、宣言だった。

 彼女の中ではすでに、勇者は“助けを必要としている存在”として確定している。


 隣でガルドが斧の柄を叩く。


「今行くぞ!」


 理由はいらない。

 勝って帰らない、それだけで十分だった。


 少し後ろで、シアンが小さく呟く。


「観察対象は、逃がさない」


 声は低く、静かで、妙に楽しげだ。

 彼にとってこの村は、事件の終着点ではない。

 本編の始まりだった。


魔王救出隊


 同じ頃、別の街道で。


 ラトは拳を握りしめ、灯りを睨むように見つめる。


「兄貴……待ってろ」


 奪われたかもしれない。

 無理をしているに違いない。

 その前提は、もう疑う余地がなかった。


 ウーナは一歩遅れて歩きながら、優しく声をかける。


「今行くからねぇ」


 その声音は穏やかで、戦場へ向かう者のものではない。

 ただ、鍋を抱えた“迎えに行く人”の声だった。


 こうして両陣営は、ほぼ同時に、同じ構文の言葉を口にした。


 ——待ってて。

 ——今行く。


 誰一人として、自分たちが間違っているとは思っていない。

 誰一人として、相手が“平和に暮らしている”可能性を考えていない。


 勇者は囚われている。

 魔王は奪われている。


 そう信じることに、何の疑問もなかった。


 ——だが、その村では。


 勇者リオと魔王アザルが、

 どちらも救出など必要とせず、

 静かで穏やかな時間を過ごしている。


 この夜、

 助けに来る者たちだけが、

 世界でいちばん切迫していた。


 そして、

 その“善意と誤解の衝突”は、

 もうすぐ村の中で、一斉に姿を現すことになる。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ