scene5 魔王救出隊の構成
◆最終まとめ:魔王救出隊の構成
ラト
「兄貴を取り戻す(ついでに人間を牽制)」
ウーナ
「ちゃんと食べさせて休ませる」
→
誰一人として
「魔王が平和に暮らしている可能性」を考えていない。 小説化
夜明けが完全に訪れるころ、
魔界から人間界へと続く道には、二つの影が並んで進んでいた。
ひとりは獣人兵ラト。
肩に武具を背負い、耳を苛立たしげに揺らしながら歩く。
ラト(心の声)
「兄貴は強い。
でも……人間ってやつは、距離の詰め方がうまい。
油断したら、心まで持っていかれる」
彼の目的は単純で、少し歪んでいる。
――兄貴を取り戻す。
――ついでに、人間を牽制する。
誰に頼まれたわけでもない。
ただ「取られた気がした」それだけで、身体は動いていた。
一方。
隣を歩く老魔族ウーナは、
大鍋を抱えながら、実に落ち着いた足取りだった。
ウーナ(心の声)
「まったく……あの子は。
戦いが終わっても、きっと気を張ったままだろう」
彼女の関心は、世界情勢でも、勝敗でもない。
――ちゃんと食べているか。
――ちゃんと休んでいるか。
それだけだった。
ウーナ
「ラト、歩きながらでも飲めるようにしてあるよ。
アザル様、きっと疲れてるからねぇ」
ラト
「……兄貴は、無理するからな」
二人は同時に、同じ“前提”を信じて疑わなかった。
・魔王アザルは疲弊している
・人間界で気を張り続けている
・だから迎えに行かなければならない
――そのどれもが、事実ではない。
その頃、目的地では。
リオ
「アザル、今日は日当たりいいね」
アザル
「……うむ。ここは眠くなる」
二人は縁側で並び、穏やかな風に身を任せていた。
誰にも追われず、
誰にも支配されず、
戦いとも無縁の、静かな時間。
だが――
魔王救出隊の構成は、すでに固まっている。
ラト
「兄貴を取り戻す(ついでに人間を牽制)」
ウーナ
「ちゃんと食べさせて、休ませる」
そして、共通点はただ一つ。
誰一人として、
『魔王が平和に暮らしている可能性』を
考えていなかった。
こうしてまた、
“善意と誤解”だけを燃料にした一団が、
何も問題のない魔王城へと向かっていくのだった。




