scene5 決意、単独救出作戦
評議会の間を飛び出したツヴァイは、
魔王城の回廊を無言で歩いていた。
先ほどまで胸を満たしていた怒りと悲しみは、
今や一点に収束し、鋼のような決意へと変わっている。
彼は立ち止まり、ゆっくりと拳を握りしめた。
ツヴァイ
「……ならば、私一人でも行くしかない」
爪が食い込むほど強く、拳を固める。
ツヴァイ
「アザル様を救えるのは――この私だけだ!!」
誰に言うでもない宣言。
だが、その声には揺るぎがなかった。
ツヴァイは武器庫へ向かい、
慣れた手つきで装備を整える。
短剣、投擲用の刃、簡易結界札。
長期戦の準備はしない。
――時間がないのだ。
食糧は最低限。乾燥肉と水袋のみ。
だが、その中に一つだけ、丁寧に包まれた袋があった。
魔王アザルの好物――
香辛料を効かせた黒蜂蜜菓子。
ツヴァイはそれを胸元にしまい、
一瞬だけ、表情を和らげる。
ツヴァイ
「アザル様……お腹を空かせているかもしれませんからね……」
次の瞬間、再び引き締まった顔になる。
ツヴァイ
「勇者に囚われ、心まで縛られているなど……
私が、必ず引き離します」
事実。
魔王は囚われてもおらず、
縛られてもいなければ、
今この瞬間も勇者と並んで穏やかに昼寝をしている。
だが、ツヴァイはそれを知らない。
彼は夜の魔界へと歩き出す。
ツヴァイ
「待っていてください、アザル様……!
忠臣ツヴァイが、必ずお救いしますから……!!」
――こうして。
誰にも頼られず、
誰にも止められず、
忠誠心だけを燃料にした
“単独救出作戦”が、静かに始まった。
その行き先が、
まったく救出を必要としない場所であることも知らずに。




