scene2 脳内で最悪のストーリー展開
人間商人の会話が耳に入ったその瞬間から、
ツヴァイの脳内は完全に暴走を始めていた。
(……アザル様が……“操られている”……?
そんなはず、そんなはずは……!)
否定しようとする理性を押しのけ、
忠誠心と愛情が生んだ“最悪の妄想映像”が、
すさまじい速度で脳裏に次々と投影されていく。
――妄想①――
魔王城の玉座。
アザルが鎖で縛られ、手足を拘束されている。
その前で勇者リオが淡々と命令を下す。
勇者リオ(妄想)
「ほら、立てよ。次は城の掃除な」
アザル(妄想)
「くっ……好きにしろ……」
ツヴァイ
(アザル様が……! 鎖……っ!!)
――妄想②――
今度は魔王城の中庭。
なぜかアザルが洗濯物を干している。
後ろで勇者リオが腕を組み、
まるで“家事をしないと怒る夫”のように見守っている。
勇者リオ(妄想)
「やり直し。そこシワ残ってる」
アザル(妄想)
「……この屈辱、覚えていろ……」
ツヴァイ
(アザル様ぁぁぁぁぁ!!
そんな……そんな扱い……耐えられるはずが……!)
ツヴァイの胸が締めつけられる。
呼吸が浅くなる。
――妄想③――
薄暗い部屋。
アザルが膝を抱え、肩を震わせている。
隣では勇者リオが淡々と書類整理している。
勇者リオ(妄想)
「反抗しても無駄だよ、魔王」
アザル(妄想)
「……もう……好きにしろ……」
その一瞬の“俯いた横顔”が、ツヴァイの心を抉った。
ツヴァイ
「うっ……ぐ……っ……アザル様……!
アザル様ぁぁぁあああ!!」
両手で顔を覆い、木陰で震える斥候。
(絶対に助けなくては……!
今、私が行かなくて誰が行くというの……!?)
忠誠心が、悲しみで真っ赤に染まっていく。
――現実のアザル――
勇者リオの腕に頭を乗せて、ぐっすり昼寝中。
そんな事実を、ツヴァイは知る由もなかった。




