scene3 勇者リオへの興味(研究対象)
シアンは旅支度用の棚を開けながら、ふと手を止めた。
指先で触れたのは、
かつて勇者リオと交戦した際に――偶然、彼の魔力を採取した小瓶。
透明なガラスの中、淡い金色の粒子がゆらめく。
シアン
「勇者リオ……」
小さくつぶやくその声は、
敬意と好奇心と、謎への渇望が混ざっていた。
シアン
「勇者という存在は、本来もっと“色”があるはずだ。
欲望、恐れ、葛藤……だが彼は――不思議なほど純粋だ。
まるで混じり気のない魔水晶のように。」
彼と戦った時の光景が脳裏に蘇る。
無駄のない動き。
透明な意志。
そして、たまに見せる“気の抜けた間”――。
シアン
「謎めいていて、純粋で、予測不能。
均衡が取れているようで、どこか砂上の城のように危うい。」
淡々と語りながら、
シアンの口元に――微笑が浮かぶ。
シアン
「そんな存在が“魔王と共存している”?
もし噂が本当なら……観察価値は100倍だ。」
弟子
「ひ、百倍……!?」
シアン
「安全? ふむ……それは後回しでいい。」
好奇心が勝ったというより、
安全という概念が最初から存在していない。
シアンは鞄に、
魔導書ではなく――分厚いノートを何冊も詰め込む。
さらに、机の上に整然と並ぶインクの瓶を次々に放り込む。
弟子
「せ、先生! インクそんなに必要ですか!?」
シアン
「もちろんだ。
今回は“未知そのものの生態系”を観察する旅になる。」
パタン、と鞄を閉じる音が研究室に響く。
その姿は完全に――
危険地帯へ向かう学者だった。
シアン
「では、行こう。
勇者リオという“研究対象”に会いに。」
こうして、魔法使いシアンの興味と好奇心に満ちた旅立ちが始まった。




