第十九話 戦士ガルドの誤解(力こそ正義) scene1 妙な噂を聞く
ガルドは、旅の途中で立ち寄った町の武具屋で、使い古した手袋の修理を頼んでいた。
カン、カン、と槌の響く音が店内にこだまする中、店主がふと世間話を切り出した。
「へぇ、聞いたかい? 勇者リオが魔王を倒したとか倒してないとか……」
ガルドの手が止まる。
「ほら、勝ったって話も出てるが、戻ってこねぇらしいじゃねぇか。
やっぱり噂は噂ってことかねぇ」
「……勝ったのに、帰らねぇ?」
低い声で呟いた瞬間、ガルドの目が鋭く細まる。
店主はただの世間話のつもりだったのだろうが、彼の脳内には“危険信号”が全力で鳴り響き始めていた。
(勝って帰らねぇなんて……おかしい。絶対おかしいだろ)
店主は気付かず、続ける。
「ま、噂なんて半分嘘だろ? 魔王がどうなったかなんて誰も――」
だが、ガルドの思考はもう別の方向へ暴走していた。
(リオが勝ったのなら、真っ先に戻るはずだ。
それが戻らないってことは……)
脳内で、彼の思考が極端な結論へ向かっていく。
(……絶対、なんかある。
魔王が裏で汚ぇ手を使ってリオを引きずり込んだに決まってる!!)
深く考えない。
推理しない。
考察も証拠もいらない。
“おかしい”=“殴りに行く”がガルド式ロジックである。
ガルドは店主に礼もそこそこに背を向けると、入口へ向かいながら呟いた。
「……リオ。待ってろよ。今助けに行く」
店主はぼんやりと手を振った。
「あ、あぁ……手袋は明日取りに――」
だが、店の扉はもうガルドの背中ごと勢いよく閉まっていた。
店主
「……何か、変なこと言ったかねぇ?」




