scene5 勇者パーティ、緊急出動
こうして――
“根拠ゼロの噂に全力で振り回される、母性フルスロットルの聖女ミナ”によって、
勇者パーティは強制遠征へ突入した。
ミナは背中に非常用の大荷物を背負い、両手には食料袋と回復薬の箱を抱え、気迫だけで風を切る。
「待っててリオ……!
聖女が今すぐ助けに行くからね……!!」
その背中には、神聖な光ではなく――危険な圧が漂っていた。
ガルドはその気迫に半歩押されながら、ぼそりと呟く。
「……こりゃ魔王より聖女様の方が怖えな……」
ルーナは袖を押さえ、冷静に未来予測を試みる。
「私……魔界に入った瞬間、魔族の皆さんが
“すみませんでした!!”って土下座する光景が見えるんですが……」
ガルドは苦笑した。
「……何もしてねぇのにな」
こうして勇者パーティは、ほぼミナの気迫に押し流される形で――
森を抜け、山を越え、全速力で魔王城へと向かっていく。
*
――しかしその頃、魔王城では。
陽光が差し込む窓辺で、ふかふかのソファに身を沈めながら、
少年リオは隣に座る魔王アザルの袖を引いた。
「アザル……昼寝しない?」
アザルは、魔王の威厳を微塵も感じさせない柔い声で返す。
「……うむ」
二人はそのまま、並んで毛布に潜り込んだ。
そこには戦火も、危険も、緊迫感の欠片もない。
ただ、魔界一居心地のいい昼寝タイムがあるだけだった。




