scene4明日の“侵略しない”スケジュール調整
マギルが、また新しい書類をめくる。
会議室の空気はすでに“ほぼ雑談”の温度だが、
一応これも重要な議題である。
「明日の予定ですが——」
淡々と読み上げるマギルの声に合わせて、
書類には驚くほど平和的な予定が並んでいた。
・午前:侵略軍の行進 → “道路工事のため中止”扱い
・午後:世界征服会議 → 昼寝のため延期
・夕方:敵国との小競り合い → “敵が寝坊した”扱いで不戦勝
読み上げる内容とは裏腹に、
マギルの表情だけは相変わらずきりっとしている。
これもまた魔王軍の伝統なのだろう。
グロウルはクッションの上で寝返りを打ち、
ぽかんとした表情で言った。
「敵が寝坊してくれるの、ありがてぇ……」
その声には本気の感謝がにじむ。
彼にとって寝坊は神の救済に近いらしい。
メレーナは編んでいた毛糸を切り、
柔らかくため息をついた。
「世界って優しいわね」
まるで平和に満ちた田舎の昼下がりのような口調だ。
死霊術師らしさは微粒子レベル。
プリュが机の上で、こくりと頷くようにぷるんと震えた。
「ぷる(同意)」
スライム語としては、最大級の肯定である。
その様子を見ていたアザルは、
胸の奥がじんわり温かくなるのを感じた。
アザル(心の声)
(……これ……平和じゃん……)
戦わないで済む。
誰も傷つかない。
みんなが好きなことをして、のんびりしている。
魔王城なのに、
まるで優しい共同生活のようだった。
アザルは、今日も世界にそっと感謝する。
“戦う必要がない世界”に。




