00:はじめに。
わたしの名前は、ヒナギク・ブランシェです。
アルデリ王国の西にある水の街『オリバス』で、アエテルニタスの配達をしています。
アエテルニタスというのは、魔法を使うときに必要な動力源。
生き物でいうところの、血液のようなものだとわたしは師匠から教わりました。
わたしが初めて体験した魔法は、箒に乗って空を自由に飛ぶことでした。
たしか、九歳の時だったと思います。
師匠と一緒に一本の箒にまたがって、持ち手についた林檎の形のガラスドームにアエテルニタスを注ぐと、箒は鳥のように地面を離れて空へと飛び立ちました。
風を切って空を飛ぶ感覚に、わたしは生まれて初めて自由を体感した気分になりました。
高いところは苦手だったのですが、不思議と恐怖は感じなかったのです。
魔法って、アエテルニタスってすごいなって、わたしは足元に小さく見えるオリバスの街並みを見下ろしながら、その力に感動しました。
その時です。師匠が空を飛びながら、
「アエテルニタスとは、大昔の言葉で永遠というのだよ」
と、教えてくれました。
永遠に魔法を使うための、魔法の源。
そしてその後、わたしが師匠の下でアエテルニタスの配達をしていた十二歳の冬のことです。
アエテルニタスの湧き出る"コールの泉"が、枯渇したという一報が師匠の下に届きました。
これは、人々の「最後の魔法」を記した、アエテルニタス配達員であるわたしの記録です。




