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6Ⅰ9~3人の使者~  作者: 笹丸一騎
6章「2045から」
35/37

35,分身

『バッド・キアリ症候群』


それがボクが吐血した原因の病名だ。何でも肝臓から心臓へと流れる静脈が、何かしらの理由で塞がってしまう病で――。


66%が発症原因不明という、難病の1つとされている。ボクの場合、「異能の使用が原因で発症した可能性もある」と医者に言われた。とはいえ、結局治ればそれでいい話。


――そう思っていた。


難病ではあるものの慢性型であれば、いくつかの治療方法により、まだ改善の見込みがあるらしい。それでもかなりの苦痛を伴うようだが――。救済があるだけまだマシだ。


そう、この口振りから察せるかと思うが、ボクは慢性型ではない。この病にかかった2割の確率である『急性型』に分類される。


急性型の場合、肝不全の影響で早くて発症後、余命1ヶ月なのだとか――。この間まで健康そのものだったのに、そんなドラマのようなことが本当に起きるのかと、どこか他人事のように実感が湧かなかった。


寧ろ、淡々と医者の説明を聞いていた父さんに驚いていたくらいだ。普通、娘が死ぬと告げられても、平然な父親などいない。そう、まるでボクが死ぬことを、事前に知っていたかのように――。


いや、それは考え過ぎか。だったら、ボクにあの一件を任せる訳がない。今はそんなくだらない妄想をするよりも、任されたことをどうこなすかを模索する。


未だ具体的に何をするか、把握していない段階。だけど、時間は最短で1ヶ月と限られている。延命処置、若しくは不老不死のような方法を取るしかない。




そうなると――。



「ボクな訳か」


式が頷いた相手は、マーリンだった。


一連の事件を知っているし、名前が偽りでないなら何世紀も生きる『生のスペシャリスト』である。何とか連絡を取り付け、緊急で入院しているボクの病室へと呼びつけた。


「こちらは15年振りの再会なのに、随分と淡白かつ、重い話を持ってくる」


自身の病と改善案を求めたところで、落胆した表情を浮かべるマーリンに、些か申し訳なさをベッドの上で感じていた。が、こちらに選択する余裕はない。


「にしても、よくボクの連絡先が分かったね?キミの父親が珍しく隙でも見せたのかな?」


「――よく、ご存じで」


実際、父さんは医者と個別で話すと言って、ボクを1人にした。携帯の入った鞄を置いたまま――。今思えば、あれは入院の手続きだったのだろうか?


「勘だけで今日まで生き残った節がある。この程度――、キミが命惜しさにボクに懇願した訳じゃないことも含めてね」


「話が早い」と言うより、思考が読まれている感覚が気持ち悪かった。ただ実際のところ、若者特有の「若くして死にたい」という思考は、異常な環境で育ったボクでも、例に漏れることなくあった。故に、冷静でいる――。


――いや嘘。やっぱり死ぬことは怖い。ただ頭が現実に追いついていないだけなのかも――。


「なら、教えてくれますか?不老不死になる方法を――」


それにボクが任されたことを放棄することはできない。だって、これは家族の未来に大きく影響することだ。最悪、三笠が体験したあの未来に成りかねない。それだけは阻止したい。


「残念だが無理だ」


まあ、案の定の回答が返ってきた。


「理由は2つ。1つ、不老不死になる為の道具を造るのに1ヵ月では足りない。2つ、仮に道具を急造しても病に侵されたキミの体では、高確率で失敗。奇跡的に成功しても、その病の症状を背負う必要がある」


けれど、断られた理由は思いの外まともだった。てっきり「こちらの秘術だから無理」と言わると予想していた。


「しかしながら――」


言うか言うまいか、悩むマーリンに「お願いします!」と懇願するボクに、彼はようやく渋々説明を始めた。


「キミは何の為、延命したいのか?それは他人に自身の与えられた仕事を引き継がせたくないから――」


式は沈黙のまま、頷く。


「立場、実力もだが、何よりキミが課せられたことは、確実に神への反感ヘイトを買う行為。だから、任せられない。いや、任せたくない。つまりキミは、自分のせいで第三者に迷惑をかけたくないと――」


また、式は頷く。


「なら、迷惑をかけてもいい存在だったら?たとえば、分身の自分とか?」


「それってクローンのこと?」


「厳密には違うが、そう思っても構わない」


「モラル的にも、法律的にも、引っかからない?」


「今更だな、神に喧嘩を売っている時点で黒坂の人間は第一級の犯罪者だよ」


「それにそれだと時間がかからない?」


「さっきも言ったが、厳密にはクローンじゃない。こちらのやり方であれば、多少の記憶と技術が引き継がれる。個体差もあるが、寿命は1世紀程度なら、能力や見た目も変わらない」


「それでも成熟するのに時間が――」


「生まれた時点で、見た目と知能ともに7歳程度。1年経過すれば、見た目だけなら成人と変わらない」


「それでも1年」


「学習能力は異能レベルに早い。1週間程度あれば、そこら辺の大人よりも使える。何より、キミの1番のネックである罪悪感は、第三者よりかマシだろ?」


相手の善意からの代案をもらっておきながら、こちらが否定的な意見ばかり、それを彼は小言1つ言わずに説明してくれた。


――恐らく、心の中では「贅沢なヤツ」だと思っているかもしれない。こんなこと、言うヤツじゃないのに――。


「ま、決めるのはキミだ。僅かな時間かもしれないが――」


ああそうか、ボクは自分で思っている程、死に対してショックを受けている。外面では冷静を装い「任されたことを――」とカッコつけておきながら、内心はただ生き残る方法がないかと足搔いている。


だから、彼の代案を受け入れられないでいる。自然と両手に力が入り、目頭が熱くなる。


「何て――卑しい」


式の歯を食いしばった表情を見たマーリンは、まるで全てを悟っているかのように「それは違う」と呟いた。


「え?」


「生きるということは、生物にとって第一の優先事項。平和ボケで忘れている連中も多いが、目的がある為に我々は生まれてきた訳じゃない。何かに生かされる為に生まれてきた。そしてそれは、別のモノへと紡ぐ為――。


その過程が卑しい?良いも悪いも、過去の馬鹿どもが勝手に付け加えたことだろ?生きたいという気持ちに、尊いも卑しくもない。キミが抱く思いは当然のこと。但し、それがままならないのが、生き物だ」


「貧乏くじを引いたから――諦めろと?」


「運というパラメーターだけは、未だボクも理解できない。良いヤツに限って若くして死に、悪いヤツに限って生き残る」


「じゃあ、ボクは良いヤツなのかな?」


「キミのお陰で救われた命が無数にある。それでキミを悪いヤツと言うのなら、その相手がたとえキミの父親でも許さないだろう」


「何故?彼方とは会って2回目の筈、それなのに――」


「それは――」


マーリンが式にとあることを伝えると、彼女は自らの口を押さえて絶句した。


「それって――ホント?」


「嘘か誠か、試してみるかい?」


「クローンを?」


「クローンじゃない――magusだ」


「マグス?」


「『魔術師』『魔法使い』とも訳せるが、これを複数形にするとmagiとなる」


「その意味は?」


「東方の三博士。そう――“キミたち”が教えてくれたことだ」



あの日から3日が経過した。


姉弟たちには今までの過労がたたった為と、嘘をついた。もし皆が知ったら、暴走するのが目に見えている。ただ、ボクが死んだ後のことを考えると父さんは不憫な気がしてならない。


「待たせたな」


式の病室に入ってきたマーリンは「約束の映像だ」と彼女にタブレット型のPCを渡した。その映像には、人1人が入れる大きさの試験官がいくつも並ぶ光景が映し出されていた。その中には、7歳前後の少女が足を抱えるかのように眠っている。


「ホントだった」


その中の1つに式が注目する。その試験官には、つい先日まで注目していた人物の姿、但しその姿は幼く、その面影のみ――。


「猪狩 沙良」


そう、彼女の正体は、式の――。

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