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6Ⅰ9~3人の使者~  作者: 笹丸一騎
0章「序幕と終焉」
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2,探し人

落ち着いたのか若い男は、盗まれたモノについて疑問を抱き、女性に問いかける。


「それが仮に聖杯だとして、その根拠は?2人の言葉を疑いたくはないけど、何か信憑性でもある訳?」


女性は若い男から目線を逸らし「それは――」と口籠る。その光景に耐え切れず赤髪の男が口にする。


「3代目と俺の親世代が、神殺しを本格的に開始した頃、メンバーの1人がその苗をコイツに託したのさ」


「それって、もしかして――」


「ああ、あの時の魔術師さ」


3人の脳裏には、白いフードを身に纏った男が不敵に笑う姿が浮かび上がる。


「結局あの人は何者なのですか?」


「さぁな、1つ言える事は、アイツは神でも人間でもない、別枠の存在とだけ」


「それでもあの人は私たちに味方している人には違いない。現にここに居る私たち3人は、多少なりとも、あの人に助けられている」


「だが何かを隠しているのは事実だ。あの苗の事だって、遠回しに言わずに言えばいい」


言い返せないとばかり、女性は目頭を押さえて俯いた。


「それってどのような事を?」


赤髪は一瞬女性に視線を向けながら「その時こう言ったと聞いた」と語り始める。


『恐らく、我々の代では悲願は叶わない。過去、現在、未来だけでは足らない。その足りないピースであるコレは、次世代である君に託そう』


「その時、渡された3代目は『これは何の苗?』とヤツに聞く。すると、ヤツは不敵な笑みでこう抜かした」


『人間の願望を叶える盃と、揶揄された時期もあるが、これ本来の役割は、人間を人間たらしめた遺物』


「人間を人間たらしめた遺物?」


言葉の意味に悩む若い男に、女性は再び躊躇う表情を浮かべるも、一呼吸を置いて口にする。


「嘗て人間は、禁断の果実を食べたが故に、エデンという楽園から追放された。人間の最も古い歴史の記述の一節。それがもう1つのあの苗の正体」


その言葉で何かに気付いた若い男は「つまり、その苗は聖杯であると同時に――」と呟き、「“知恵の樹”でもある訳さ」と赤髪の男が告げる。



苗の信憑性を得たかった筈なのに、更なる謎が判明する事で若い男は更に頭を抱えている。その一方、女性は確かめたかった事を終えたのか、赤髪の前に仁王立ちする。


「それで?その大事な大事な苗を盗まれて、アナタは一体どうするつもり?」


赤髪の男は気まずそうに目線を逸らし、椅子から立ち上がる。数秒間だけ視線が交わるも「一度拠点に戻る」と再び目線を逸らし、部屋の外へと歩き出す。


「結局、部下頼みって訳?」


視線を動かさないまま、不満を漏らす彼女に「否定しない」という言葉を最後に赤髪の男は、部屋から去っていった。


「たく!いくら戦力が増しても、連携が取れてないなら同盟の意味ないじゃない!」


取り残された彼女は、怒りに身を任せ、右足を地面に踏み抜いた。彼女の力は凄まじく、軽い地響きとドスンという音が鳴り響く。


「お、おっしゃる通りで」


若い男が何か言葉をかけようとすると、彼女の携帯電話が「ピピピピ」と鳴り始めた。不機嫌な顔のまま、彼女は相手を確かめずに電話に出た。


「はい?ああ――何?」


相手は知り合いなのか、見頭を押さえつつ、返答する。


「え?神奈川の大学?何で?」


彼女は相手の説明を聞く為、暫し沈黙をするが。「い、イカーーちょ、ちょっと!そうポンポンポンポン固有名詞を言わないでくれる?」


相手の説明内容に追い付けず、女性は若い男にジェスチャーでノートとペンを要求した。すぐに彼は、胸元にしまっていたメモ帳とペンを彼女に渡す。


彼女は小声で「ありがとう」と言い、左の肩と左耳で携帯を挟みつつ、再度説明をするように電話の相手へ要求する。


「キャンパスは金沢八景ね?相手はイカリ サラ。えぇ、分かったわ」


電話を切った彼女は、何か納得いかない表情を浮かべ、携帯電話をジッと見つめる。彼女の行動で電話の相手を察したのか若い男は「お父さん?」と言うと、彼女は無言で頷いた。


「引退宣言しといてあの人は――」


ようやく吹っ切れたのか、彼女は携帯を服にしまい、部屋の外へと足を向ける。


「それだけ君が心配なのさ」


「いいえ、私じゃない。あの人が心配しているのは――」


「人類だけよ」


その言葉とともに、2人も金庫の部屋から去り、誰もいなくなった部屋。


だがしかし、不思議な事に、女性が開けた筈の壁と地面は、まるで逆再生の映像のように、みるみると元の状態へと戻っていく。そして、3つの扉も、奥の扉から順にゆっくりと閉じていくのだった。



同日、某大学の敷地内。


「要は、君のお父さんは今回の件を聞いた時、大学時代に遭遇した奇妙な出来事を思い出した。その内容は、今回の出来事と深く関係していると感心した為、それを確かめたい。


だけど、自身は引退した身。直接行動する訳にはいかない為、君が代わりに確かめてもらいたい。その確かめる人物の名前がこの大学の教授である「猪狩 沙良」さん」


目的地に向かう途中、彼女から聞いた内容を自身も整理する為、聞かされた内容を口ずさむ。すると女性は「よくできました」と言いつつ、気の抜けた拍手をパチパチと叩く。


「それで、その猪狩さんに何を――」


「分かりました。今の時間は302号室で講義をしております」


大学の女性職員が彼の言葉を遮り、彼女はそのまま「ありがとうございます」と言い、該当の部屋へと躊躇いなく歩き出す。


「よく、部屋の番号だけで場所が分かるね」


「一様、母校だからね。とは言っても私が通っていたのは別のキャンパスだったけど」


「ああだから、あの職員さんも疑う事もなかったのか」


「それもあるけど、私と父は有名だからね」


「そうなの?」


「君の“世界”だって有名だったでしょ?」


「それは―――」


言葉につまった男性は、足を止める。それに気付いた彼女は目頭を押さえ「ごめんなさい」と申し訳なさそうに謝る。


「思い出したくなかったわよね」


「いや、何も知らなかった時より、今の方がいいさ。ごめん、気を使わせて」


「いいえ、私も無神経だったわ。それよりも目的だけど――」


「力学的、数学的な要素。法則とその答えに、今まで私たちは答えてきたし、これからも答えるでしょう。でも、実際は別の要素によって、その答えは変動する」


2人は声がする部屋の表記を確認すると、「302」と記載されていた。


「実際に、時速と時間をかけた道のりを解いたとしても、10人中10人が同じ時速で同じ時間を歩ける訳じゃない。信号が赤になったり、道を聞かれたり、足を痛めたり、別の要因が常に存在する」


2人は講義がおこなわれている部屋の窓を覗き込む。すると、そこには高身長で、見た目は20代後半くらいの整った顔立ちで、黒い長髪を靡かせる女性が見えた。


特徴的なのは、実験をする訳でもないのに、白衣を着ている事。白衣のポケットに手を入れたまま、教卓の周囲を歩きつつ、学生に問いかけていた。


「彼女が?」


「ええ、彼女が猪狩 沙良。父さんが会えと言った人物よ」


「随分と若い人だね――あれ、若い?」


「気付いた?」


「確か、君のお父さんの大学時代に――」


彼が何を言いたいのか察したのか、彼女は無言で頷いた。


「君は驚かないのか?」


「だって、私も知っている人だからね。この大学に赴任して以来、見た目が一切変わらない“魔女”と呼ばれた有名教授。私の頃には年齢を言わなくなったけど、父さんの話がホントなら、当時28歳と言っていたから、少なくとも今は50歳を軽く超えている筈」


再度、猪狩を見る男は、信じられない表情で彼女をみつめる。すると、彼女の目線が男に向けられた。


「あっ」


「見られた?」と女性の言葉に、男は無言で頷く。


「別にこの後、声をかけるし、別にいいわよ。それより目的よ」


女性は先程メモを取った紙を取り出した。


「今回の目的は、あの人でなく、あの人の探し人」


「探し人?」


「その人の名は三笠 トオル。2011年3月上旬。この大学の卒業式を最後に、行方不明になった人よ」

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