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6Ⅰ9~3人の使者~  作者: 笹丸一騎
3章「容疑者」
18/37

18,「3」

今話している相手の名前を、ようやく知れた事は良かった。だが、『何故いきなり?』そう相手に聞いてみると――。


「過去に、アナタと同じ偽善者がいた。ソイツはこの計画に参加しておきながら、計画を否定した。なすべきことは他にあると――」


「その人とは仲良くなれそうだ」


「“過去に”と言ったはず――。ソイツは、絵空事ばかり言う夢想家だったが、唯一“未来に”希望を抱いていた。そしてソイツは、俺の代わりに死んだ」


「つまり、同じ思想だから名前を教えてくれた?」


「いや、単純に名前を言い忘れていたと思って――」


『そんなの嘘だ』とは思ったが、敢えて深堀はすまい。嘘をつくならそれでもいい。少しでもこちらの話に耳を傾けてくれるのなら――。


「それで?あのデジタル時計のカウントは?」


とにかく情報がほしい。前回の時よりも、出来る限り――。


「人間に裁きが下される時刻」


「誰から?」


その言葉を口にした瞬間、大きな爆音が背後から聞こえた。それと同時に発生した地響きで、俺と岸野はその場に座り込む。


音の方角に視線を向けると、壁に亀裂が入り、あの時計のカウントは、動きだし、サイレンが部屋中に鳴り響く。


「一体何が?」


「アンタが言う裁きの時刻とか?」


「いや、それはない。ある筈がない」


何故かと理由を尋ねる前に、岸野は俺にあの鎧を差し出した。


「これを着て」


「何故?」


「恐らくこれが、サイの言っていた“裏”なのかも」


「サイ?裏?」


「計画を否定したヤツさ。アイツは言っていた『常識は表、非常識は裏。いつだって、表は裏に、裏は表になる』」


「だからこれを着ろって?」


「アナタはこの時代の人間じゃない。それに俺みたく、アナタを歓迎しないかも――」


「誰に?」


WGAO(ダブル・ジー・エー・オー)


「ダブル何?」


「ここの場所さ」



たった数日前、殺されそうになった相手の鎧を、まさか自身が着る事になるとは――。


俺は岸野の言われた通り、足、腕、胴体、頭の順番に、鎧を装着していく。外見はかなり頑強で重そうに思えたが、実際に装着してみると随分と軽い。


これに自動修復機能が備わっているのだから、未来の技術は凄い。時間を止める部屋に、過去へ行く方法も知っているようだ。更に、この男は『念力』の異能者。


一つ前の未来のように、壊滅状態になるのも理解できる。だが、今目の前にいるコイツが、あの人物と同一だとは思えない。確かに、人は心変わりをする生き物――絶対はない。


いや待て。あの時に会った岸野は、この時代よりも後の岸野の筈。だって、ここで訓練をしてから、過去へ行くと言っていた。つまり、この時代で伝えたことを、あの時にしなければ別人。


「なぁ頼みがある」


「何ですか?」


「もし過去で、俺と会った時、何か合図がほしい」


「合図?」


「そう例えば――指を鳴らすとか」


実際に指をパチンと鳴してみる。岸野は「まぁ考えておきます」と言いつつ、壁に入った亀裂に進んでいく。


目を閉じて、過去の記憶を辿ってみる。しかし、あの記憶に何も変化がない。ならば、やはりこの時代とあの時代は別物なのか?それとも――。


「オマエたちは、誰だ!」


岸野の大声に驚き、彼の元へと急いで向かう。船内か何か、相変わらず窓などはなく、外を視認できない。金属でコーティングされた通路の先には、広い空間が現れ、そこに岸野はいた。


――見知らぬ、“3名”と共に――。



この鎧と同年代。いやもっと昔か?とある女戦士を彷彿とさせる恰好をしている3名。しかし、3名ともに、黒い仮面で顔を覆って素顔が分からない。


それにしても、仮面率高くないか?


「あら?鬼神(キシン)こと、岸野 戒は、1人だったと聞いていたけど、まさか鎧は自動操作?」


3名の中央にいた人物が、仮面を外す。思わず見とれてしまいそうな顔立ちに、口の左下にホクロが特徴的だった。


「相手に顔をさらすなど」


「そうだよ」


左右の2人は、仮面ごしからの籠った声で彼女を注意している。


「関係ないでしょ?どうせここは終わる。もう、過去にも行けないのだから」


「それって、まさか」


何かを察したのか、岸野は口を震わせ、強張った表情で、前に少しずつ進む。


「ええ、――WGAOは壊滅した。生き残りは、貴方1人だけ」


よく見ると、この場所の至る所に血痕の後が、残っている。だとしても、死体などは見当たらない。


「嘘だ」


小さな声に中央の女性は、高らかに笑いだす。


「どこに隠れていたか知らないけど、ここを襲ってから、既に3日は過ぎているのよ?今更ノコノコやって来て何を言っているのだか――」


3日?爆音とサイレンが聞こえてから、あまり時間が経過したとは思えない。だけど、あの部屋は、時間の流れを遅くする。その効力が、壁に壊された後も、ほんの少し継続していたということか?


「嘘だ!」


岸野の体に、青い光が身にまとう。どれと同時に、爆破による残骸か、至る所にあった鉄屑も、青く光り始めていく。


「ハハ、いいぞいいぞ」


「戦闘狂め、何でわざわざ煽るのだか」


「ホント、信じられないッス」


3名の女性は、どこからともなく現れた銀色の剣と盾を両手に携え、戦闘態勢に入る。


このまま戦闘が始まってしまうのか?相手が何者かも、分からないまま?


岸野は雄叫びあげ、3名に突っ込んでいく。その瞬間――。


「パチン!」という音が鳴った。


「え?」


音は俺の背後から聞こえ、反射的に振り向く。するとそこには、あの白仮面の姿があった。


「何て顔をしている?」


状況においつけず、呆然としていた自覚はあった。よっぽど間抜けた顔をしていたのだろう。


「これで3回目の体験だけど、余りにも唐突過ぎて」


「ハハ、だろうな」


「はは」と、相手に呼応して思わず笑ってしまった。


「いや!こんな呑気なことを――」


岸野とあの3人が、もう戦っている。


「言っている――」


加勢しないと――。そう思った俺は、すぐに岸野たちに視線を動かした。


「場合――」


でも、何故だ?何故何も聞こえてこない?物音1つ、この間に聞こえなかった。


「じゃあ――あれ?」


俺の視界には、ついさっき見た光景のまま――。


――時間が止まっていた。


「何が――」


「起きたかって?」


右耳から急に、白仮面の声がした。


「うわっと、いつの間に」


右を向くと、数メートル後方にいた相手は、俺の横に立っていた。


「時間移動できるからな、止めるのも訳ない」


「じゃあ、何で前回は止めなかった?」


「あの時は、遅れてね」


「時間を止められるのに?」


「別に時間を止められるからといって、遅刻しない訳じゃない」


「へぇ」


「いいか時間を止めるには――」


「いや、解説は求めてない」


「そうか」


残念そうに肩を落とす白仮面を見て、改めて思ったことがある。


――やはり、全員別人だ。


1度目は、俺を責め続け――。

2度目は、俺に感謝して――。

3度目は、俺と会話している。


「それよりアンタの目的は何だ?」


「目的?」


「目的がない訳じゃないだろ?最初のハンカチも、このコインも、何かを俺に伝える為、わざわざ時間移動もさせて――いい迷惑だよ!」


「確かにハンカチとコインは、こちら側がやったことだが、時間移動をさせたのは違う」


「何?」


「あくまで、元の時間へ送り届けるのが役割」


「そんな訳ないだろ?じゃあ、今までの3回の移動は――」


「いや、3回じゃない」


「“4回目”だ」



三笠先輩が発見された。


場所は、元のエレベーターの中。本来であれば、警察沙汰に発展するような事件だが、母親の力を利用して、情報統制を行った。


もしこれで、三笠先輩の奇妙な体験が世間に広まれば、ここの本来あるべき役割が、遂行できない可能性がる。それは避けるべきだ。


だとしても、何故だ?


――何故先輩は――“3週間”も消えた?

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